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ALS患者高野元の日常と思考と回想

ALS進行と療養の経緯(5) 〜 2015年後半

   

これまでALS発症の経緯を書いてきました。

発症から2年が過ぎ、『進行と療養』のほうがしっくり来るようになったので、タイトルを変更しました。

振り返ると、あっという間に一年が過ぎていった気がします。ALSの進行は、速いな〜と思うこともあれば、意外と進行が遅いなと思うこともあります。

今年後半のトピックスといえば、ラジカットの投与と日本ALS協会の活動に参加し始めたことです。これらを交えて、経緯を振り返ってみます。

ALSの進行

今年の前半に比べて衰えたと感じることを列挙します。

球麻痺の進行と首の筋力低下

喉や舌の周りの筋肉の動きが悪くなるのが球麻痺で、嚥下障害や構音障害につながります。

構音障害は随分進んできて、一息で言えない単語も増えて、家族でも聞き取れないことが増えてきました。それなりに話さないとならない時は、パソコンやスマホの音声合成機能を活用しています。

嚥下障害も進み、咀嚼した食べものを食道へ送りこむ機能が衰えてきたので、おかずは小さく切ってもらうようになりました。水やお茶、汁物はとろみを付けるよう言われていますが、飲み方を工夫することでなんとか対応しています。

首を支える力が落ちてきて、食事をとろうと頭を下げると首が緊張して、つられて嚥下もしにくくなるので食事をするのも一苦労です。

上肢の動きが悪化

今年の春頃には、すでに右腕を動かしにくくなっていましたが、問題がなかった左腕ががんばっていました。

その左腕も筋力低下がすすみ、頭の上に持ち上げたり、食事を口元に運ぶのに苦労するようになりました。着替えは介助がないと難しいですし、食事も部分的に介助してもらうことが増えました。

また、右手の各指と右手首の動きが悪くなり、キーボードを打つのに時間がかかるようにになりました。

下肢の動きが悪化

すでに外出時には車いすを使っていましたが、家の中ではあちこち設置した手すりにつかまって自分で移動できていました。

しかし、脚力が低下すると同時に足首周りや股関節の柔軟性が低下して、椅子やソファからの立ち上がりに苦労するようになりました。特に深く腰掛けるソファはおしりを持ち上げての体重移動ができなくなり、介助が必要になりました。

体のあちこちがつっぱる

筋萎縮が進むと、筋力が低下するだけでなく柔軟性が落ちてきます。そうすると、体を動かすとどこかの筋肉が伸びるときに痛みを感じて、反射的に縮もうとします。つまり、伸びようとした筋肉がつるのです。

気をつけて体を動かさないと、つっぱってしまって思うように動かないようになってしまいます。

呼吸機能の低下

呼吸には、胸郭と横隔膜の柔軟性が大切です。横隔膜が下がることで胸郭が膨らみ空気を吸い込むからです。

日常生活に直接の支障は出ていませんが、5リットル近くあった肺活量が、4リットルほどに減ってきました。そろそろ呼吸機能のサポートを考える時期になったようです。

ラジカットの投与

ALSの治療薬として認可されたものは、リルゾールしかありませんでしたが、今年の6月末に「ラジカット」が認可されました。

ラジカットは、もともと脳梗塞急性期に発生するフリーラジカルを除去するための薬剤として使われていました。ALSの原因として、フリーラジカルが運動神経の新陳代謝を阻害するという説があり、これに対処するためにラジカットを使うというものです。

治験の結果は、「半年のプラセボ患者との比較で、進行速度に有意な差が見られる」というものでしたが、ALSは症状に個人差が大きいので、自分に効果があるかはやってみないとわかりません。

最初の治験から15年かかって認可されたこともあって、主治医も使用には慎重でした。病院の受け入れ体制もこれから、という状況でしたが、意思を伝えて対応してもらえることになりました。

第1クールは入院して投与し、第2クール第3クールは訪問医師に引き継いでもらって在宅で投与することができました。12月の第4クールでは、一週目は入院してバイパップ導入(後述)の検査を実施しつつラジカットを投与し、二週目は退院して在宅で投与しました。

投与しない自分と比較できないので、効果についてははっきりしたことはいえませんが、気分的には良い方向で維持できています。

在宅療養の対応

体の機能低下に伴い、在宅療養の環境も変化していきました。

訪問医師、訪問看護の開始

体が動きにくくなると、病院に行くのも一苦労です。体の変調には迅速な対応が必要になるので、地域の訪問医師と訪問看護との関係を作り始めました。ラジカットの在宅投与も、この延長上にあります。

一階での生活にシフト

下肢の機能低下に伴い、階段の登り降りがしんどくなっていきました。上りは両手に手すりがあればなんとかできますが、左腕の筋力が落ちて来たことで下りは介助がないと危ない状態になってきました。

書斎と寝室は2階にあるのですが、ラジカットの第1クールのあとに介護ベッドを1階においたことで、1階で生活するようになりました。

夜間バイパップの開始

日常生活での問題はないものの、先に書いたように、徐々に肺活量が減っています。呼吸機能のリハビリは、肺をできるだけ膨らませて胸郭を拡げるように行います。

これは自分の呼吸筋だけではできないことで、吸気を補助する必要があります。

このために夜間はバイパップという呼吸器を用意して、呼吸筋を楽にしてあげることにしました。ほんの少し圧をかけて空気を送り込んでくれるのですが、これだけで肺は広がる感じがします。

公的支援の対応

障害の程度が進めば、得られる公的支援も変化します。この半年でいくつか変更がありました。

身体障害者手帳2級に変更

下肢と上肢の機能低下と構音障害が進んだことによって、身体障害者手帳の等級変更を申請し、2級となりました。

これまでは4級でしたが、2級になるといろいろな助成を受けられるようになります(詳細は割愛します)。

川崎市の重度障害者医療費助成事業

そんな助成の一つに、重度障害者医療費助成というものがあります。重度障害者が医療機関等を受診したときの保険医療費の自己負担額等を川崎市が助成する制度です。なお、自治体によってその内容は変わるので、在住の自治体で確認してください。

すでにALSとの告知を受けた段階で、神奈川県の指定難病医療費助成制度により、毎月の医療費の自己負担は2万円までとなっています。

身体障害者手帳2級になったことで、この2万円も助成されることになり、事実上無償で医療を受けられることになりました。

特に変更がないもの

身体機能の低下に伴い、介護保険の要介護度認定も見直せる時期です。こちらは年明けに手続きを進める予定です。

障害年金は障害の程度によらないので、65歳で老齢年金に切り替わるまで継続して支給されます。

社会とのつながり

稼ぐ仕事は3月で終了したので、その観点での社会との接点はなくなってしまいました。療養生活だけでもそれなりに忙しいのですが、ヒマといえばヒマです。そんなわけで、何かできることはないかといろいろ試しました。

日本ALS協会の活動参加

ALSなどの難病は患者数もそれほど多くなく、行政の支援や医療介護側のノウハウも十分とはいえません。そんな環境では患者関係者の連帯が大切です。

患者会としての日本ALS協会は30年ほど前に発足し、患者の療養環境を整えるべく活動してきました。

そうした先人の努力のおかげで今があるわけで、少しでも貢献したいと思い、神奈川県支部の活動に参加しています。とは言え、できることはまだまだ少なく、教えてもらうことが多いですが。

友人たちの支援

さまざまな友人たちが、いろいろな支援をしてくれています。

  • 会いに来てくれる
  • 旬の食材を送ってくれる
  • 連れだしてくれる
  • 仕事のアドバイスを求めてくれる。。
  • などなど

ありがたいことです。この場を借りて深く感謝します。

おわりに

2015年後半の療養生活をまとめました。医療・介護・公的支援と知るべき事が多く大変ですが、より良い療養生活を送るには、自分の意志を明らかにして周囲の支援を取り付けるしかありません。

後に続く患者関係者にすこしでも役に立てると考えて、来年も頑張っていこうと思います。

 

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