ALS進行と療養の経緯(8) 〜 2017年前半

ALS生活, 発症と療養の経緯

ALS生活も発症から4年を過ぎ、呼吸機能の低下が気になるようになってきました。また、口から食べるのが大変になってきました。

時系列でトピックスを列挙する形で、療養生活を振り返っておきます。

1月

【体調】

年をまたぐころから急速に左手の機能が落ちはじめました。右手の機能はすでに相当落ちていて、パソコンはほとんど左手で打っていたので、左手が動かなくなるとパソコンが打てません。

当時抱えていた原稿が打てなくなり、各所に迷惑をかけ始めました。

また、講演の仕事もいただいていたのですが、パワポの資料も読み上げ原稿もきっちり完成させることができずに、講演の後半は文字盤を読み取ってもらって質疑に応えるのが精一杯でした。

【介護】

介護保険の枠をほぼ使い切っており、昨年11月に障害者支援枠で居宅介護の64時間支給を受けていました。このおかげで、地域の介護事業所から、全曜日の朝に身体介護に入ってもらえるようになりました。しかし、いずれの事業所もヘルパーの3号研修(喀痰吸引と胃ろうの実施)受講はしてもらえず。気管切開の決断に必要な条件でしたが、現実問題を突き付けられてしまいました。

2月

【医療】

一年ぶりに新潟病院にリハビリ入院しました。目的は医療用HALを使った下肢状態の改善。首を支えられなくなるとHALは難しいといわれていましたが、リハさんがネックコルセットを工夫してくれたおかげでなんとか実施できました。

入院中の24時間のモニタリングにより、血中酸素濃度は93-97%前後を保っていたものの、血中二酸化炭素濃度が上がっている時間帯があることが判明。日中に睡魔に襲われたり、疲れやすくなっていたのは、このせいだった模様。夜間数時間つけていたバイパップの時間を,日中も追加するよう指導を受けました。

【体調】

このころの体重は68キロ。高校大学のころのベスト体重でしたが、これを何とか維持したいところでした。胃瘻造設の昨年4月から経管栄養と経口からの食事で過ごしてきました。失われる筋肉は脂肪より重いし、小さな動きでもカロリー消費するので、たくさん食べなくちゃいけないのに食べられない状況になってきていました。

3月

【体調】

ベッドに横になり右手を左手で支えることで、何とかスマホが入力できる状態にまで手の機能が悪化し、日がな一日ベッドでアマゾンビデオばかり見て過ごすようになりました。

こうしてアウトプットができなくなるのかと、どんどん気持ちが落ち込んでいきました。

また、食事の呑み込みが難しくなって食べたものや水分が気管に流れ込むようになり、むせに難渋するようになりました。食事後のカフアシストが必須となりました。

【医療】

呼吸機能の低下が始まっていたことと、食事を口から取りつづけるために、気管切開と誤嚥防止手術を受ける決心をしました。介護体制の整備が間に合っていませんでしたが、まず体の状態を改善することにしました。

4月

【体調】

今年の誕生日会は、自宅でこぢんまりと開催してもらいました。気管切開をすることを決めたものの、家族にも社会にも大きな負担を強いる選択であり、そのなかで自分は生きて何をするのかを明確にできないままに応援してくれといえない、という気持ちがあったためです。

【環境】

一方、設定に苦労してきた視線入力環境が、突然使えるようになりました。なかなか、視線をうまくとらえる体制を見つけられずに試行錯誤していました。自分では設定できず、友人に来てもらっては調整を繰り返していました。

本来は、地域のリハビリセンターの支援を仰ぐべきだったのですが、長くITの専門家として仕事をしてきた身としては、自分で何とかしたいという気持ちが捨てきれませんでした。

とにかく、ローコスト視線入力装置tobii eyetracking 4C とフリーソフトHeartyLadderの組み合わせで、コミュニケーション環境が立ち上がりました。

5月

【医療】

日ごろから、国立精神神経医療研究センター病院の寄本先生から立位を取ることの大切さを指導されていた私は、病院に行かないと立位が取れないことを何とかしたいと考えていました。

昨年導入した屋内リフトを使って、立位スリングを使えば立てるのではないかと検討し、訪問リハさんと試行錯誤してきた方法が形になり始めました。週2回の訪問リハの中で、壁にもたれながら毎回10分間立っています。

中旬には聖マリアンナ医大病院に入院し、気管切開と誤嚥傍受術を受けました。顔なじみの看護師さんたちにはとてもよくしてもらい、視線入力環境を毎日セットしてもらったおかげで、快適な入院生活が送れました。

ゆとりのある時間の中で、自分の心から湧き出す思いを必ず形にしたいと思うようになりました。

6月

【医療】

術後の経過もよく、6月中旬には退院することができました。自宅に戻って早々にいくつかのトラブルに会いましたが、何とかクリアしました。こうやって、新しい生活に慣れていくのでしょう。

今回の手術の顛末は、しっかりブログに書きました。

【介護】

一般的に、気管切開後はたんの吸引が大きな介護負担となると聞いていました。対策として、自動吸引機アモレを導入しましたが、それでも吸引は必要でした。特に夜間は何度か妻を起こさなければならず、痰吸引ができるヘルパーの確保が大きな課題となりました。

訪看ステーションが週5日×3時間のケアを決断してくれたことで、少し前進しました。

【体調】

入院前は65キロあった体重は、退院時は61キロまで減っていました。さすがに50キロ台は困るなぁと思いましたが、食が細くなってしまって経口の食事がうまく取れません。むせずに食べるために手術したのに、呑み込みのコツが今一つつかめずにいました。