障害年金について
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)と認定された後に、病院のソーシャルワーカーから公的支援の仕組みについて説明を受けました。下記4つの、異なる公的支援を組み合わせて対応していくというものでした。
- 障害者手帳の認定取得
- 介護保険の認定取得
- 特定疾患医療給付制度の認定取得
- 障害年金の認定取得
最近ようやく障害年金の認定がとれたので、何かの参考になればと書いておきます。
Contents
4つの公的支援の役割
ALSと認定されたのちに公的支援の仕組みを調べると、行政特有の個別案件に対する対応を理解して組み合わせないとならないとわかりました。これが全くALS患者の不安に沿ったものではないので、療養生活の最初のハードルになります。
冒頭で書いた4つの公的支援を簡単にまとめると、下表のようになります。
支援名 | 概要 | 自己負担 | 意義 |
障害者手帳 | 障害者福祉器具・装具の提供または補助。 公共サービス(交通、施設など)の使用料が無料または減額。 |
福祉器具、公共サービスの内容による。 | 社会生活上の費用負担を軽減。 |
介護保険 | 介護費用の補助。介護等級により、利用総額の上限値あり。 | 2割または1割(前年度収入と状況による) | 介護療養生活の費用負担を軽減。 |
特定疾患医療給付制度 | 特定疾患の医療費を支援。 | 通常の医療保険に準ずるが、上限は2万円/月。 | 難病の医療費負担を軽減。 |
障害年金 | 障害による就労困難者への年金。 | 年金と税金の支払いは通常通り。 | ベーシック・インカム |
最初の3つが費用負担を軽減する施策なのに対して、障害年金は収入を確保するものであることがわかります。私は、ベーシック・インカムと捉えています。
なお、これ以外にも「重度障害者医療費助成」というものがあります。医療費の自己負担分を支援するものですが、私の現在のステージでは適用外なので、ここでは割愛します。
障害年金とは
障害年金について、もう少し詳しく見てみましょう。この年金の性質を一言で言うと、
病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にある期間支給される年金
です。当然、細かく支給条件が設定されています。
初診日に年金加入していること
病気やケガが発生した日時に、国民年金または厚生年金に加入していることが必須条件です。「病気やケガが発生した日時」とは、医療機関を受診した「初診日」になります。
この初診日から1年6ヶ月経過した時点で、障害の状態にあれば障害年金の支給条件を満たすと認定されます。
なお、重度障害への具体的な処方をされた場合は、その時点で認定されます。
障害年金も2階建て
老齢年金と同じで、加入しているのが国民年金なら障害基礎年金、厚生年金なら障害基礎年金に障害厚生年金が加算されて支給されます。
注意すべきなのは、支給時ではなく「初診日」にどちらの年金に加入しているかで、障害基礎年金か障害厚生年金かが決まるということです。
詳しい記述のある、日本年金機構へのリンクを挙げておきます。
障害年金はハードルが高い?
申請しないと得られないことと、老齢年金・遺族年金に比べて認知度が低いため、受給の権利を行使していない人が多いと聞きました。
また取得のハードルが高いらしく、申請書の書き方を支援して成功報酬をとる社労士保険労務士事務所も多数ありました。「障害年金 申請」で検索すると、多数の事務所が表示されるのがわかります。
私の申請の経緯
自分で申請すると認定されないのではないかと不安になりますが、自力で申請して認定をとれたので、その顛末を紹介します。
私がALSの告知を受けたのは2014.10ですが、初診は2013.10になります。したがって、初診日から1年半後の2015.4に受給条件を満たすことになります。
なので、告知直後は他の公的支援の手続きをすすめ、障害年金の手続きを準備したのは2015.3に入ってからです。
必要書類
申請にあたってはいくつかの書類の作成が必要になります (詳細はこちら→ 障害厚生年金を受けられるとき)。
- 年金手帳
- 戸籍謄本
- 医師の診断書
- 受診状況等証明書
- 病歴・就労状況等申立書
- 受取先金融機関
- 印鑑
重要なのは、「医師の診断書」と「病歴・就労状況等申立書」です。
「医師の診断書」は、理学療法士など有資格者による身体能力の測定結果と、主治医の所見からなります。依頼してからある程度時間が必要なので、早めに医者と相談したほうがよいでしょう。
「病歴・就労状況等申立書」をどれだけ丁寧に書けるかがカギのようで、私は後述する点に留意して書きました。
また、「受診状況等証明書」は、初診の病院と主治医がいる現在の病院が異なる場合に必要です。初診日の領収証があれば証明になるそうですが、私は最初の病院で証明書を発行してもらいました。
病歴・就労状況等申立書を書く際に気をつけたこと
この書類は、医療機関の受診状況と生活における病状の経緯を伝えるものです。他の行政宛書類と同様に、具体的で誤解がないように明瞭に記述すればよいものです。
したがって、私が気をつけたのは下記2点です。
- 医療機関の受診日をすべて記載し、診断経過をできるだけ詳細に書くこと。
- 病状の進行によって生活上どのような問題が発生したかを、具体的に書くこと。
記述した内容を一部抜粋して紹介します。
(3) 平成26年1月 〜 8月
受診した ◯◯医大病院 3/6, 5/1, 6/6, 6/26, 7/?
日常の歩行で、躓いて転ぶようになる。スリッパがうまく履けないようになる。周囲からも、右脚の不具合を指摘されて心配されるようになる。
3月頃から、長く会話をすると鼻声になるようになる。6月頃からは、だんだんとろれつが回りにくくなったり、大きな声が出しにくなって、人前で講演するのが難しくなる。
電車などで長時間立ち続けるのが辛くなる。5月頃から電車の網棚に荷物を上げたり下ろしたりするのが、やりにくくなる。本来、力があったはずの右手では網棚に上げにくくなり、左手で行うようになる。
6月頃から、坂道を下る時に加速を止められないようになる。通常歩行であっても、掴まるところがある場所でないと常に転びそうな状態となる。車の運転はしていたが、8月に入る頃から不安を感じて止めた。
ほぼすべての予定をスケジュール帳(Googleカレンダー)に入力していたことと、告知後に発症の経緯をまとめてブログで発信していたことから、記述する内容を用意することへの負担はありませんでした。ただ、当時軽いうつ状態にあったので、なかなか手がつかなかったんですが。。
既に読みやすい字を書くことができなかったので、事前に年金事務所に確認した上で、PCでタイプした文章を書類に切り貼りして提出しました。切り貼りや提出は、妻にやってもらいました。
私は神奈川県川崎市在住ですが、書類提出後3ヶ月で年金証書が送られてきました。予想よりも早い対応でした。
おわりに
障害年金の獲得について、ALS患者の視点で書きました。すでに告知を受けたり、病状から不安を感じている方がすべきことを把握するために、多少でもお役に立てれば幸いです。
私は、初診日には国民年金に加入していたため、22年間にわたって収めた厚生年金分を考慮した支給になっていないことが残念ではあります。この辺りの仕組みの課題については、余力がある時に調べてみたいと思っています。