NTTドコモがXi対応iPhone発売する?

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本日の日経ビジネスWeb版にて、ドコモが来年にiPhone/iPadを販売するという報が流れ、数時間後にドコモが否定するというやりとりがありました。先日のauのiPhoner販売を思い出させますが、いろいろ腑に落ちなかったり、LTE技術についても政治的な動きがあるので、ちょっと頭を整理しつつ書いてみます。

顛末おさらい

朝イチで出たリーク記事がこれ。

日経ビジネスリーク記事

アップルはドコモにiPhoneやiPadの販売権を与える条件として、ドコモが昨年12月に商用化したLTEネットワーク(サービス名は「Xi(クロッシィ)」)に対応させることを要求し、ドコモがこれに応じたもようだ。

一部の人達が騒ぎ始めて、昼前には下記広報が。

ドコモからのお知らせ

現時点において、「iPhone」及び「iPad」の取り扱いについて、当社がアップル社と基本合意したという事実はございません。

また、現時点において、「iPhone」及び「iPad」の取り扱いに関し、アップル社と具体的な交渉をしている事実もございません。

9月のauのiPhone4s発売リークと同様に、リーク記事を見て、すぐに火消し広報が出るだろうと予想した人は多いはずです。

「LTE対応を要求」の意味

「アップルはドコモにLTEに対応させることを要求した」ということなのですが、実はその意味がわかりませんでした。わたしが想定したのは下記3つです。

(1) ドコモがAppleにLTE対応を要求した、の日本語の間違い

(2) Appleから、販売台数をコミットするなら回線品質を維持するだけのXiインフラへの投資もコミットせよ、と要求された、の意味

(3) Xi対応に必要な技術開発費をドコモが持つように、の意味

さすがに(1)はないですよね。日本語の問題ですから、日経BPの記者さんが間違えるとは思えません。

(2)の根拠は、AppleはというよりJobsがサービス全体で考えており、ネットワークインフラの整備もキャリア選定の条件であることはよく知られているためです。

(3)の根拠は、PDCからFOMAへの移行時のように、新技術を導入する際にキャリアが端末メーカを支援する事例は過去にあり、Appleもこの枠組みを作って自社の研究開発投資を軽減するのは理にかなっているためです。

さて、これまでの事例から見て、今回もマスコミのリーク→否定→時期が来たら発表、という流れなのでしょうから、正解は(2)か(3)です。

もし(2)だとすれば、来年度の経営計画への影響が大きく、取締役会決議と株主総会承認にかけていない事業計画を公にするわけにはいきませんから、コーポレート・ガバナンス上も否定せざるを得ません。

もちろんAppleから怒られる、という線もあるでしょうが、auの轍がある手前そんな間抜けなことはしないでしょう。(3)の関連した意図のあるリークなのではないか?と考えてます。

LTEって実はまだ戦いが終わっていない

さて、意図のあるリーク、の意味をもう少し掘り下げてみましょう。

LTEには、FDD方式(FD-LTE)とTDD方式(TD-LTE)の二つの方式があります。ごく簡単に言うと、

  • FD-LTE : 上り回線と下り回線を、周波数帯で分ける
  • TD-LTE : 上り回線と下り回線を、時間で切り替える

方式です。

FD-LTEはLTE方式の主流なので、普通LTEといえばFD-LTE方式を指します。ドコモのXiやアメリカのVerizonがこの方式です。主流なら、次世代のiPhone5は普通に(FD-)LTE対応してもいいよね?と思いますね。

ところがどっこい、6億人の加入者を抱える世界最大のモバイルキャリアである中国移動(Chine Mobile)は、TD-LTEを強力に推進しており、昨年の上海万博で実証実験を済ませています。また、Nokiaの対応やインドでの実証実験も始まっています。

つまり、グローバルで見ると、Xiへの対応の優先順位は下がるのです。

 

で、日本でTD-LTEを推進しているのはウィルコムを買収したソフトバンクモバイルです。ウィルコムがやってきたPHSの高速化技術XGPは、すでにTD-LTEへの転用が可能な状態にあるようです。

Appleとしては、4G回線対応はすでに製品開発に入っているはずで、来年上期に発売であればすでにキャリア各社にオファーを出しているはずです。今回のリークは、そんななかでのドコモからソフトバンクモバイルへの牽制球だったのではないでしょうか。光回線の訴訟問題もあり、なかなかきな臭い状況ですよね。

 

そんな次世代無線通信技術から次世代iPhoneを眺めてみると、auさん大丈夫か? と心配になります。auさんの次世代技術ってなんでしたっけ? ともあれ、スマフォ戦国時代は当分興味深い展開が続きそうです。詳しい情報や知見をお持ちの方は、ぜひご教授ください。