スイスで開催されたALS国際シンポジウムに参加してきました(前編:準備編)

ALS生活, コミュニティ活動, 旅行・海外, 発症と療養の経緯

はじめに

12/6-8にスイスのバーゼルで開催された、34th International Symposium on ALS/MND (以下、ALS国際シンポジウム)に参加してきました。

これは、告知の頃からひそかに抱いていた「人工呼吸器をつけてもいつかは海外に行くんだ」との目標を実現するイベントでもありました。

実現には、一年がかりの準備と、数多くの方の支援がありました。その概要を紹介していきます。

参加の経緯

私は2014年9月にALSの告知を受けました。病気について調べるうちに、故・橋本操さん、岡部宏生さんが台湾に行った記事を見つけました。これは絶望の中のわずかな希望になりました。

2019年12月には、ALS/MNDサポートセンターさくら会にて開催された、ALS国際会議参加についての協議に参加します。

しかし、やる気になり始めたところで、コロナ禍が勃発。3年間開催が見送られてしまいました。

昨年の暮に、ようやくALS国際シンポがスイス・バーゼルで開催されるとアナウンスされました。これは参加するしかないと、2023年の目標とすることを決意して、誰にも言わずに準備を始めました。

日本在宅医療連合学会大会に参加

とはいえ、自分が主張したいこともぼんやりしたままだったので、一度練習が必要でした。ちょうど、日本在宅医療連合学会が演題を募集していたので、HeartyPresenterを題材にポスター投稿しました。

3月からアンケートの設計を始めて、4月に私に講演を依頼してくれた方々と、数少ないユーザにアンケートを依頼、5月にまとめて、6月頭には、ビデオ・ポスターを提出しました。

この学会は6月24-25日に新潟で開催されたのですが、気管切開手術後に初めて外泊する経験になりました。

ALS国際シンポジウムに投稿

当初は、前述の学会発表内容を英語にして投稿するつもりでした。募集要項では500ワードのアブストラクトを投稿することになっていたので、ChatGPTを駆使して作成しました。予定より早く仕上がったので、コレはもう一本行けるなと思い、今回の発表内容は、

  • 重度障害者向けソフトウェア HeartyPresenterを用いた社会参加の機会拡大とALSとともに生きる生活の再構築への心理的効果、髙野元、吉村隆樹
  • ALS療養の日本型モデルの事例:家族に頼らない24時間の在宅療養がいかにALS療養の患者の生活の質を高めるか、髙野元、川口有美子、寄本恵輔、中山優季、中島孝

の2本になりました。

出張手配

バーゼルは地方都市の一つで、ANAがスイス航空とのコードシェア便を飛ばしていた、チューリッヒ直行便を選択しました。チューリッヒとバーゼルの間は鉄道です。

「飛行機は必ず揉めるから」と過去の経験者から脅されていたので、まず個別交渉することを前提に、ANAオンラインで8月末にチケットを取りました。この時点で、ビジネスクラスは60万円弱でした。

現地での宿泊と移動は、早々に旅行代理店に任せました。

ボランティアチームの結成

シンポジウム参加までにやらないといけないこととしては、

  • 旅行手配(航空会社との交渉含む)
  • ポスターの作成
  • HeartyPresenterの英語化
  • 渡航費用支援のクラウドファンディング

と多岐にわたり、さらに10月21日には1時間の講演を抱えていて、自分だけではやりきれないことが明白でした。

そこで、Facebookで繋がっている友人・知人にボランティアを募ったところ、12名の方が手を挙げてくれました。これを4つのチームに分けて、全体スケジュールとチームごとの作業概要書を提示して、自律的に作業を進めてもらいました。

北海道旅行

気管切開手術をして人工呼吸器を使うようになってからは、飛行機に乗っていなかったので、飛行機に乗る練習が必要でした。息子二人に頼んで、10月中旬に札幌に家族旅行をしてきました。

確認したいこととしては、

  • 上空で呼吸に変化はないか、人工呼吸器の設定に変更は必要ないか
  • 人工呼吸器、カフアシスト、自動たん吸引器アモレ、自動唾液吸引器、を機内に持ち込む手続きはどんなものか
  • 電動車いすペルモビールF5を運んで貰う手続きはどんなものか

でした。

これらは無事に検証できて、いろいろ課題が見つかりましたが、ご興味おありの方は下記をご覧ください。

サッポロ弾丸旅行記(3)  /   サッポロ弾丸旅行記(4)

クラウドファンディング

渡航費用の一部を寄付で賄おうと、10月30日から11月30日までクラウドファンディングを実施しました。

渡航費用を400万円と見積もり、その半分を寄付で賄う目論見でした。平均で1万円の支援を150人集めることはできると思っていましたが、そこから先は下記のインフルエンサーの応援メッセージの拡散に期待していました。

武藤将胤 岡部宏生 恩田聖敬 織田友理子 寄本恵輔 川口有美子 吉藤オリィ
(敬称略。クリックすると、それぞれの応援メッセージに飛びます)

いざクラファンを開始すると、2日間で目標額に達してしまい、驚愕していました。最終的に、291人の方から417万円ものご支援をいただくことになりました。

あらためてご支援いただいた方々にお礼申し上げます。

ポスターの制作

オンライン公開するデジタルポスターの投稿締め切りは11月15日でした。

ボランティアチームには、関連する過去のプレゼン資料を渡して英訳してもらい、ポスターの下データにさせてもらいました。

10月後半に2週間で作り、ボランティアチームにレビューしてもらいました。共著者の先生方にもコメントを頂いて、なんとか形になりました。

後編:実行編ー>