レゴ・シリアスプレイによるサービス企画
私は仕事として、新規事業開発のコンサルティングをしています。事業のアイデアは、表面的な思いつきではなく、心の深いところにある感情から生まれるのが一番いいのですが、これをどうやって目に見える形に引き出せばいいのか? が大きな課題となっています。
先日書いたブログ記事「イノベーション・ファシリテータ認定を取得しました」に書いたように、フューチャー・セッションのようなワークショップを通じて心の声に気づくのがひとつの方法です。それで方向性が得られたとして、これをどうやって具体的な製品やサービスの形にしていくか、についても方法論が必要でした。
デザイン思考の方法論では、仮説を持ってプロトタイプを作って、潜在的なユーザに触ってもらいながら、そこからユーザが本当に求めているものを共感によって見つけ出そうとします。
初期の事業企画とプロトタイピングを組み合わせることができれば、具体的なサービスアイデアを迅速に創りだすことができるので、結果として数多くの試行錯誤ができることになります。
このプロトタイピングを通じてアイデアを引き出す手法としてレゴ®シリアスプレイ®に注目していたのですが、今年の5月に講習を受けて認定ファシリテーターとなりました。
レゴ®シリアスプレイ®とは
レゴ®はおもちゃとして有名で、実際に遊んだことのある人も多いと思います。
そのレゴ社が、社内改革のために創りだした手法がシリアスプレイ®です(詳細はこちらを参照 )。その開発をリードしたのが、ロバート・ラスムッセン氏です。
ポイントは、MIT メディアラボから生まれた教育理論「コンストラクショニズム」という考え方です。これは、「手を動かしながら何かを作ることで新しい知識を学ぶ」というもので、子供の時にどうやって遊んだかを思い出してもらうと理解しやすいかもしれません。
シリアスプレイ®は、ツールを使ってコミュニケーションを見える化し、そこから参加者の思いを引き出す数々の手法を取りまとめたものです。ファシリテータは、こうした理論や手法を理解したうえで、レゴシリアスプレイを用いて成果を導く役割を担います。
なお、レゴの使用は強制されませんが、レゴを超える柔軟なツールがなく、結局レゴを使うことになるので、レゴ®シリアスプレイ®と総称しています。
ラスムッセン氏による4日間の講義と模擬ワークショップを通じて、ファシリテータ認定をとることができます。講義は英語ですが、通訳がついたり受講生同士で支援しあうので、何とかなりました。
サービス企画への活用
シリアスプレイ®は、メンバを巻き込んでの戦略立案や、それに伴う組織改革を支援する手法ですが、コンストラクショニズムがプロトタイピングとつながるので、製品/サービスの企画立案にも有効と考えました。
サービスのアイデアを口頭で議論すると、お互いのイメージすりあわない「空中戦」になってしまい、いつまでたっても具体化しないという経験を多くの方がされていると思います。アイデアをテキストや絵にするだけで、お互いのイメージの違いが減って一歩具体化しますが、修正が面倒なのですぐに空中戦に戻ってしまいます。
そこでアイデアはレゴを使って形にして、その形に対して議論をするのです。レゴなら、すぐに形を変えたりアイデア=部品を追加したり外したりできますから、コンストラクショニズムよろしく、作りながらアイデアが具体化していく効果が期待できます。
建設的な議論をするためには、議論のフォーマットがあったほうがいいですね。私は、ビジネスモデル・キャンバス(以下、BMC)と価値提案(Value Proposition)キャンバス(以下、VPC)を使いました。世界的に有名でシンプルかつパワフルなツールで、慣れ親しんでいる人が多いことが理由です。
参考までに、関連書籍を挙げておきます。
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[amazonjs asin="4798136964″ locale="JP" title="図解ビジネスモデル・ジェネレーション ワークショップ"]
[amazonjs asin="4798140562″ locale="JP" title="バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る"]
活用事例
縁あって、9月に某SI企業にて新サービス企画のワークショップをやらせてもらったので、その様子を簡単に紹介します。
チーム作り
一人ひとりのアイデアをレゴで表現してもらって、これを見せ合ってチームを作ります。
アイデアブレスト
チームに分かれて、一人ずつレゴの形を通じてアイデアを紹介しつつ質疑をしていきます。
そこで出た議論を拾いながら、チームが取り組むテーマを一枚のシートに整理していきます。
・価値提案内容を検討
VPCを埋めていく議論を、やはりレゴを使って進めていきます。
想定するユーザをレゴで作ってみて、それに対して喜びや苦労が何か話し合いつつ、シートを記入していきます。
ビジネス全体像の検討
VPCに記載されている内容を元に、BMCを埋めていきます。
ここではレゴは使いませんでしたが、チーム内でのコミュニケーションがスムースになっているので、活発な議論が行われます。
◯おわりに
レゴシリアスプレイと、その新サービス開発への活用事例を紹介しました。
レゴは、参加者の皆さんを笑顔に、饒舌にしてくれます。新しいサービスのアイデアは楽しく創りだす方がいいですよね。
レゴシリアスプレイは、チームの新サービス開発をリードするマネージャー・リーダークラスや、組織横断的なファシリテーションが求められる、経営企画部門の方が身につけると良いスキルだと思います。
また、デザイン思考におけるプロトタイピングのツールとしても優れています。シリアスプレイにとらわれず、まずは「手を動かして作ってみる」ことの効用を体験する人が増えるといいなと考えています。