イノベーション・ファシリテータ認定を取得しました
ブログを書こうと思いつつ放置していましたが、今年の7月にイノベーション・ファシリテータの認定を取得しました。昨年2013年10-12月の講座を経て、一定の基準を満たす実践経験が必要なものでしたので、久しぶりに気合が入りました。
はじまったばかりのものなので、まだ公的に広く認知されている資格ではありませんし、認定がないと活動ができないわけでもありませんが、これから取得を目指す人が増えていき相互に協力しあって活動が拡大するといいなと期待しています。
なぜ私が、この「イノベーション・ファシリテーター」を目指し、認定を取得したのかを書いてみたいと思います。
イノベーション・ファシリテーターとは?
ファシリテーターとは、 wikipedia によると、
ファシリテーターは学習や議論の進行など何かしらを“促進する”機能を担おうとする者
とありますが、イノベーション・ファシリテーターとは、フューチャーセッションを仕掛けるファシリテーターです。
では、フューチャーセッションとは何でしょうか? フューチャーセッション開催プラットフォームである ourfutures によると、
フューチャーセッションは、最適解のない複雑な問題を解決するために、企業・行政・NPOなどのセクターの壁、組織内の部署の壁、専門分野の壁など、立場の違いを超えた対話により、協調アクションを生み出す場です。
フューチャーセッションには、次のような特徴があります。
1. 既存の問題設定とは異なる、フレッシュで良質な「問い」の設定から始めること
2. 新たな「問い」に応じた、未来のステークホルダーを選び(キュレーション)、招き入れること
3. 創造的な対話を通して、未来に向けての「新たな関係性」と「新たなアイデア」を生み出すこと
4. 対話だけで終わることなく、ステークホルダー同士が協力して行動できる状況やアクションプランを生み出すこと
とあります。
この4つの特徴を具現化するファシリテーターが、イノベーション・ファシリテーターなのです。
なぜ、受講したのか?
私は仕事として、新規事業開発のコンサルティングをしています。事業のアイデアは、表面的な思いつきではなく、心の深いところにある感情から生まれるのが一番いいのですが、これをどうやって目に見える形に引き出せばいいのか? が大きな課題でした。
縁あって、フューチャーセッションズ代表の野村恭彦さんが主催するフューチャー・セッションに何度か参加するうちに、これは一つの解決策だと思うに至りました。自分もイノベーション・ファシリテーターになって、多くの人の心にあるアイデアを形にしたいと思いはじめたところに本講座の開催を知りました。まさに野村さんが講義してくれるということで、すぐに参加申し込みをしました。
講座参加と認定取得まで
本講座はできたてのホヤホヤの第一回でした。
第一回 10月、第二回 11月、第三回 12月の、合計五日間のカリキュラムです。第一回と第二回は土日連続で、1日目に思想や技術の講義と演習を行い、2日目にはひたすら実践というパターンでした。第三回はまとめ会であり、一人ひとりの参加者が、自らのあり方を宣言します。
で、これだけやったら認定をもらえるのかと思いきや。。。終了後の実践経験がないと認定は出ないよ、とあっさり言われてしまいました。でも、これは講座提供側の本気度と捉えることもできます。
これで俄然燃えた私は、3ヶ月で認定をとってやると、3回のフューチャーセッション企画書を起こして、友人にプレゼンして、毎月一回以上のセッションを開催していきました。
講義で教わった10あまりのプラクティスを取り込んで実践すること、参加者の満足度が得られていること、参加者のアクションを喚起すること、という認定基準をクリアするために、毎回のセッションをじっくり考えて構成していきました。
ありがたいことに3回を継続的に参加してくれる方もいて、さらに追加した2回をあわせた合計5回の開催のレポートを提出して、認定をいただけることになりました。
ちょうど第二期講座の最終日に授与式をやっていただいたのですが、非常にうれしかったですね。50才目前になって、こういった高揚感があるのっていいなと思いました。
フューチャーセッションを開催して感じたこと
3回のセッションを開催するためには、ある程度大きなテーマが必要だと考えて、「2020年のオリンピックに向けて何ができるか?」というテーマで開催していきました。
オリンピック開催に否定的だったり、興味ないよ、と言っている参加者が多かったのですが、セッションを進めていくうちに前のめりにアイデアが出始めて、最後にはオリンピックを利用してアイデアを実現しようとする形に転換していく様子が、実に嬉しくて楽しい経験でした。
実施したセッションのレポートはこちらになります。
また、いくつかのクライアント先で、アイデア出しのセッションをやってみました。オーソドックスな手順で取り組めば、2~3時間で「これやってみたい!」と思えるアイデアが出て来ます。みなさんに「こんなにアイデアが出るなんて驚いた。またやりたい!」と言ってもらえることに手応えを感じます。
認定を取る意義
ファシリテーションは仕事の上で必須のスキルでしたが、会議の進行をスムースにするだけ、程度の認識でいました。また、参加者側にいるときには、表面的な進行を真似すればいいのかな、と軽く考えてもいました。
しかし、ひとりひとりの参加者から思いを引き出し、最後には全員が納得できる成果を出すための技法や手順がこれほど多く準備されているとは知りませんでした。これらを短時間で実演も含めて学ぶことができたのは、大きな収穫でした。
認定を取るということは、自分自身が知識や実践経験に対して自信を持てる、という効果があります。私も、初期のセッションは不安だらけでしたが、認定をとろうと頑張っているうちに、根拠の無い不安は消えていきました。
認定を持っているというのは、他のファシリテータに対して優位にあるということではないですね。どのようなスタンスでファシリテーションをしているか説明するラベルができ、お互いにスキルを交換したり相談したりしやすくなる、ということです。
私が考えるイノベーション・ファシリテーター像
未来をイキイキと描きだし、どう行動すればいいかを考えるのが、イノベーションの第一歩です。そのために安心して発言できる場を作り、一人ひとりの参加者の心の奥にあるイメージを引き出し、それを掛け合わせる触媒となるのが、イノベーション・ファシリテータなのかなと、今は考えています。
野村さんをはじめ優れたファシリテーターの方たちは、よく「場に委ねる」と言うのですが、その場にどのような雰囲気を持たせ、どのようにイメージを引き出して膨らませるかは、ファシリテーターの人間性が出ます。私は、参加者一人一人が勇気を持って、いま心の奥底で感じたことを口に出したくなる場作りをしていきたいと思っています。
特に40代の迷える管理職に伝えたいのですが、イノベーション・ファシリテータは単なるスキルではありません。変化の時代に最も必要となるリーダーシップのスキルです。ただ、新しいのでマネジメントの教科書には書いてありません。
自らが奇抜なアイデアを出そうとするのではなく、新しいリーダーシップ・スキルを身につけ、身近な人達の思いを集めてイノベーションを生み出す人がひとりでも増えるといいなと考えて、その一翼を担いたいと思っています。