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ALS患者高野元の日常と思考と回想

【書評】神経難病リハビリテーション―100の叡智―

   

ALS患者にとって、根治の方法が見つかっていないということは、大きな精神的な負担になっています。衰えるばかりの体を改善することが難しいということになれば、日々を生きるモチベーションを保つのも難しいでしょう。

医療といえば、薬や手術での症状改善を思い浮かべがちですが、もう一つリハビリも大切な医療行為です。リハビリは治療の後の機能回復を助けるもので、どうしても裏方のイメージでとらえられがちです。

でも、ALSには前提になる治療がありません。認可薬はありますが、運動神経が壊れることに対して、数か月の進行抑制効果しかありません。だとすると、少しでも筋肉の維持をするにはどうするかを考えるのが自然なことのように思います。

告知後病気について学ぶ中で、たくさんの人からリハビリが重要だといわれました。進行する中で、体の柔軟性をどう維持するか、痛みとどう付き合うか、衰える機能でどう日常生活を送るか、これまで様々なリハビリスタッフに対応してもらいました。

友人に強く勧められてセカンドオピニオンを取りに行った、国立精神・神経医療研究センター病院が、神経難病のリハビリに積極的に取り組んでいたのは、幸運としか言いようがありませんでした。

また、訪問リハビリのスタッフが、通り一遍の施術でよしとせず、ALSとそのケアを学んで試してくれることも、ありがたいことです。

そうした環境にあっても、

  • 個々の施術の理論的バックグラウンドをきちんと知りたい。
  • 体に起きるトラブルを網羅的に理解し、優先順位付けをきちんとしたい。

と考えてきました。

そもそも、リハビリスタッフも経験と文献を頼りに試行錯誤を繰り返すわけですから、できるだけ協力したい。だから、少しでもベースになる考え方を知っておきたいのです。

また、取り巻く状況や支援者をすべて把握できるのは自分であり、最後は自分が決断しないといけないと考えています。ケアマネさんを中心に、そうした取りまとめをしてくれる(多職種連携というそうです)場合でも、最後は「ご本人はどうしたいですか?」と聞かれることになりますから、きちんと答えられるようになりたい。

そんなわけで、リハビリを網羅的に扱っていて、専門的であっても比較的読みやすい、いい本がないかなーとつねづね思ってきました。

出ましたよ、そんな本が。

日ごろお世話になっている、国立精神・神経医療センター病院・身体リハビリテーション部の理学療法士、寄本恵輔先生の監修で、たくさんの先端事例がまとめられています。

トピックスのすべてに大見出しがついているので、興味に従ってどこからでも読むことができます。また、それぞれ数ページにまとめられているので、専門的な内容であっても読みとおしやすくなっています。

各トピックスごとに詳細な参考文献リストがついているので、必要に応じてさらに詳しい情報を得ることもできるでしょう。

病気についてかなり突っ込んだ記述もありました。たとえば、「叡智22」には、「FTLD(前頭側頭葉変性症、認知症の一形態)とALSの両方にTDP-43タンパク質の異常蓄積が見られ、ALSは症候群ととらえる見方がある」ことに言及しています。

私は、時々肩や肩甲骨の痛みになやまされるのですが、それについても記述がありました。これ以外にも、これまで体験してきた機能低下、痛みについての記述もあり、もっと早くこの本があればよかった、と思うこともしばしば。

この本は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に向けた本ですが、神経難病にかかわる看護師、ヘルパーなどにも目を通してほしい本です。

患者にとっても、自分の体に何が起きているのかを知り、自分の体のケアを人任せにしないために、必読ではないかと思います。別に専門的な知識を持つ必要はありませんが、プロに何をお願いしているかを理解することが、自己決定感を持ち主体的な療養生活を送ることになるのだと思います。

大作なので、まだすべてに目を通せていませんが、少しずつ読んでいこうと思います。

ところで、本のページがめくれない私は、読みたいところを1ページずつスマホで写真を撮ってもらい、それをパソコンに取り込んで読んでいます。電子書籍版がほしいところです。電子書籍版があれば、訪問リハ・看護師の皆さんも持ち運びが楽になるかもしれません。

電子書籍版が待たれるところです。

 - 病理・医療, 読書メモ