あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅

大連生活, 読書メモ

4月から全6回でNHKで放映されている土曜ドラマの原作です。

http://www.nhk.or.jp/dodra/harukanaru/

私は2006年から中国遼寧省大連市にからんだ仕事をしており、旧満州国となった中国東北三省での歴史には強い関心があります。

本書は2008年度大宅賞を受賞しているのですが、NHKドラマを見るまで存在を知りませんでした。たまたま週末のテレビ欄を見ていて、第一回の放映を見たのですが、通常の残留孤児の物語ではなく、1972年の日中国交回復前に独力で帰国を果たした父の軌跡を、娘が中国での実体験を通じてひもといていくというスタイルに魅了されました。

終戦間近の混乱期に中国に置き去りにされた人は数多くおり、本書の主人公も5歳のときにたった一人で置き去りにされました。日本人というだけで殺されそうになるところを救われ、養母に引き取られてから深い愛情のもとで育っていく過程と日本帰国を心に誓うまで、そして文化大革命の嵐の中で生き延びてついに日本帰国を果たします。

事実に基づくだけに、同様の小説である山崎豊子作の「大地の子」よりもインパクトがあり、心に迫ってきます。

また、作者である娘が中国に取り組み、その昔父と交わった人々との交流を通じて、中国を理解していく様子も感動的です。

中国の人は、家族というか仲間になると本当に親身に尽くしますが、その外にいる人に対しては排他的な行動をとることがあり、これが日本人から見ると理解しがたい行動に見えることがあります。

本書は一人の残留孤児のドキュメンタリというだけでなく、情に厚い中国人の一面を理解し、日中に横たわる過去の歴史を理解し、そしてこれからの日中交流を考える上で、とても参考になる本だと思います。

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