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ALS患者高野元の日常と思考と回想

大学入学にあたっての手紙

   

長男が大学生になりました。入学式の前日に渡した手紙を少々手直ししたものを紹介します。

1. 入った大学が一番よい大学

受験時の第一志望校ではなかったのは残念かもしれないが、過去は振り返って後悔しても返ってこない。あのときもっと努力しておけばよかったという気持ちがあるなら、その気持をもって今後の生活を向上させてほしい。

これから学歴や大学ランキングに悩まされることがあるかもしれない。大学の序列はたしかにあるが、もっとも大切なことは自分が学ぶ大学でベストを尽くすことだ。

これまでいろんな人を見てきた経験から言えるのは、大学名にコンプレックスが強い人は大学生活を楽しんでいない。その原因を自分の学歴のせいにしている人なので、決して惑わされてはならない。自分の大学に誇りを持ち、聞かれたら堂々と答えるように。

2. 新しい学部のメリット

いまは世の中の仕組みが変わろうとしている時期で、産業のかたちもどんどん変わっている。我々が大学生だった30年前は、コンピュータといえばハードウェアの勉強が中心で、ソフトウェアの勉強はたいして行われていなかった。

これからは社会の問題解決や生活の質を向上させるために、いままで以上にあたりまえにコンピュータが使われる。ハードウェアとソフトウェアをどう組み合わせて使えば日常生活を向上できるのか、を考える仕事はもっと増えていく。しかし、そのような動きに対応できている大学学部はまだそれほど多くはない。

世の中が変わる時期には、古いカリキュラムに縛られている伝統ある大学や学部は変化への対応が遅くなる。むしろ出来たばかりで、先生方がカリキュラムを試行錯誤しているくらいのほうが自由に勉強できる。

3. 大学は学問をするところ

さて高校生までは、あらかじめ決められた知識とその使い方を覚えればよかったが、大学は学問をするところである。

学問とは、

(1) 問題をどのように設定するかを考える
(2) その問題をどのように解くかを考える

のセットでできている。

大学はその方法を学ぶところであって、社会の発展に貢献できるだけの能力を、自ら獲得できるようになることが期待されている。

自分が興味を持てるテーマを常に探して、それに集中的にとりくんでいくことで、上にあげた2つのことを学んでいってほしい。最初は先人の経験を学ぶので精一杯だと思うが、卒業する時にはどんな小さなことでもいいから、他の誰もやっていない問題を見つけて、それを解くことに挑戦してほしい。

4. 一生の友人を作るところ

大学生活は、人生で最も自由な時間がある4年間となる。人が人として成長して幸せに生きるために、人との関係をどう作っていくかを学んでほしい。

友人との関係は、『共通のテーマ × 接触頻度』で決まる。一つのテーマに協力して真剣に取り組める友人を見つけてほしい。きっとその中の何人かは、一生の友人となるだろう。

共通のテーマは、別にひとつである必要はないし、たいていは偶然に決まるものだ。友人の数の多少は重要ではないが、たくさんの知り合いをつくるほうが、人間関係について学ぶ機会も増えるだろう。また、人間関係は、人の目や理屈を気にしすぎず、自分の感情を大切にしていくことを勧める。

5. お金について学ぶ

大学生活を通じて、お金を稼ぐことと使うことについて学んでほしい。大学生は大人になる最後の修行期間であって、大人になるとは、最低限の生活費は自分で稼いで自分の生活に責任を持つことだからだ。

どんなアルバイトが稼げるのか稼げないのか、を知ることで、キレイごとではない社会の仕組みを知ることができるだろう。時間を切り売りしてお金をもらうことの喜びと限界を知ったあとは、価値を生み出してその対価としてお金をもらう経験ができるとなおいいだろう。

また、限られたお金の中で、自分がほしい物をどうやって手に入れるかを考えるのも大切なことだ。浪費・消費・投資、を意識して、上手にお金を遣うことを覚えて欲しい。どれが良くてどれが悪いということはなくて、今使ったお金はどれなのか意識することと、収入に合わせてその比率を調整することが大切だ。

  • 浪費: 時間と空間をやり過ごすために使う。
  • 消費: 日常生活を送るために使う。
  • 投資: 将来自分に返ってくるものに使う。最も有益なのは学習への投資。

ただし、浪費を抑えて投資を確保する努力はしたほうが良い。その理由は、ある程度年を取ればわかる時が来るだろう。

また、この考え方は時間についても適用できることが、そのうち分かるだろう。

6. たくさん挑戦して、たくさん失敗せよ

大学生になれば、これまでにない自由な環境でいろんなことに挑戦できる。興味があることはどんどんやってみてほしい。未経験のものに挑戦すれば、失敗もするだろうが、そこから何かを学び、次に活かせばよいのだ。

一つ一つの失敗にとらわれる必要はないが、失敗に気づいたら誠実に後始末までやらないと学びは得られない。時には自分だけでは回復できない失敗もあるだろうが、そのときは観念して周囲に助けを求めること。

失敗を繰り返したとしても、最後に自分の中に何かを得ることができれば、それは成功である。それまでの失敗はすべて成功までの試行錯誤に変わる。卒業時に、いろいろ失敗して学んだなと思えれば、良い学生生活を送ったといえるのではないだろうか。

大学生から20代のうちにたくさん挑戦して失敗した人は、そこから学んで30代以降の人生を豊かに過ごしているというのは覚えていてほしい。大学時代から20代にかけて失敗していない人が、30代から失敗に学んで成長するのは、不可能ではないがとても難しい。そして、人はどこかで必ず失敗するのだから、その経験は早いほうがいいのだ。

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大学生活を思い切り楽しんで、一人前の大人になれるように応援しています。

 - 父からの手紙