ALS発症の経緯(1) 〜 2013年

ALS生活,発症と療養の経緯

よく聞かれることなので、友人たちには知ってもらいたいのと、体の不調からALSではないかと不安を持っている方がこちらへたどり着くこともあると思うので、僕のALS発症の経緯を書いておくことにします。

はじめに

発症の経緯と言っても、ALSは原因が特定されていない病気なので、いつどこでどのようにして発病したかを特定することはできません。

なので、振り返ってみて自分が自覚症状だなと思うことで、経過を説明することになるのですが、その前から体の中では変化が起きていたと考えるのが自然ですね。

2013.1:テニスのプレイ中に転んでしまう

2008年にいまの住処に引越してから、近所のテニスクラブの会員になって、週末は定期的にプレイをしてきました。

この正月のプレイ中に、右足の爪先を左足で踏んで転んでしまったことがありました。ダブルス中に、ポジションを変えるためにステップを踏んだ時に、動いているはずの右足が動いておらず、左足を送ったところにそのまま右足があって、踏んだまま体重移動したので転んだのです。

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※写真はイメージです。

 

一瞬何が起きたのかよくわからず、周囲もびっくりでした。風邪でも引いたのかな、くらいの気持ちで、その日はプレイを続けたのですが。

その後、少しずつプレイ中におかしいなと思うことが増えていきました。

  • スマッシュやロブの背走に、バックステップをしようとすると転ぶ
  • 右サイドに走りだそうとする、最初の一歩が遅れる
  • 低いボールに対応しようとしても、十分に腰が落とせない

など、上手く走れなくなって少しずつプレイの質が落ちていきました。

2013前半:それでも国内外に出張

とは言え、日常生活にはほとんど影響がなく、長い距離を歩いても特に問題は感じていませんでした。2月から6月にかけては、あちこち出かけて行きました。

5月にシリコンバレーに行った時は、これまでよりも疲れが抜けず、帰国してからも2週間ほど体調が優れませんでした。連日歩き回っていたこともあって、当時は「年齢による衰えかな?」と考えていましたが、振り返ると病気の影響が出始めていたのかもしれません。

2013.8:家族で金毘羅さんに登る

息子たちの夏休みに合わせて、家族で香川県高松市に遊びに行きました。当時高2の長男が、瀬戸内国際芸術祭のボランティアに行ったので、それに合わせて家族で芸術祭を見て回りました。

最終日は暑い中、金毘羅さんに登ったのですが、奥の院までの1300段あまりを登り切っています。さすがに汗だくでしたが、まだ長い距離を歩けていました。

ただ、この頃には明らかに疲れやすくなったと感じていました。

2013.9:テニスをギブアップ

この頃から、ゆっくりであっても走ることができなくなっていましたし、階段を下りるときにバランスを崩しやすくなっていました。そうなると、テニスをするのも難しくなります。

球出し程度ならいいですが、ダブルス中心のクラブテニスでは、周囲の人もイライラしたり気を使うし、なにより自分もストレスでいっぱいになってしまいました。

9月末をもって一旦クラブは休会して、病院で検査したうえできちんと治療しようと決心しました。それでも、この頃は加齢による何かの原因があって、それを特定したら直して、また復帰するつもりでした。

はじめて、何かに躓いて転んでしまったのがこの頃でした。

2013.10:近所の病院で診てもらう

近所の総合病院で検査を受け始めました。

この頃は、まだ右足の具合がちょっとおかしい、くらいでした。引きずるほどではないが動きが悪く、足首先から先に力が入らず、膝から下が冷たく血が巡っていない感じでした。

ひざ下のあちこちを叩いて反射の様子を見たり、MRIやCTを取っていきました。

4回ほど通院で検査をしたところで、医者から

「原因がわかりません。症状から見てALSの可能性もありますが、その確認には別の検査も必要です。研究機能を持つ大学病院にかかることをお薦めします。」

と、ここではじめてALSという単語が現れました。三日間ほど仕事が手につかなくなり、ネットで片っ端から調べていました。妻にだけ「ALSの可能性があるかも」と伝えました。

2013.12 大学病院で検査入院

11月に入り、近所の大学病院に紹介状を持って診察を受けに行きました。医師は、紹介元病院の資料を確認した上で、追加のMRIなどの検査を行っていきました。

何度か通院で検査したあと、検査入院が必要ということになりました。「検査結果を見て、次の検査内容を考えて、また検査する作業を集中してやる。」という説明でした。

2週間ほどかかるということだったので、仕事のタイミングがあわずに、結局12月後半に検査入院をしました。

MRI, CTなどに加えて、筋肉反応試験、神経伝達速度試験、といった運動機能の確認もおこないました。この段階では、通常の機能範囲といえないこともない、ということで、3ヶ月後に経過観察という話になりました。

結局、結論は出ず

検査入院だったので、ほとんど友人には知らせず、また検査も一日のうち1-2時間で終わってしまうので、とてもヒマで不満でした。

当時はまだ普通に元気だったので、運動不足解消になるかと、病棟のある7Fからロビーのある1Fまで、手すりを使いながら階段の昇り降りをしていたくらいでした。

検査入院をしたことで却って、診断が決定しないのだからALSではない、と考えていました。体の不調の原因が西洋医学的にはわかりにくいところにあるなら、東洋医学を試していこうと決めつつ、新年を迎えました。

 

photo credit: Steve Snodgrass via photopin cc