日本-アジアの人の動きを調べてみた(1) 〜 訪日外国人統計
日本とアジアの関係に関心を抱きながら数字を押さえていなかったので、今さらながら統計値を調べています。関係する方たちには当たり前のデータですが、あらためて眺めてみて新鮮な驚きが幾つかありましたので、ブログに残すことにしました。
関係省庁から統計情報が公開されているので、その経年変化を追ってみるという形で、下記3つのデータを見ています。
- 訪日外国人統計(日本政府観光局)
- 出国日本人統計(総務省)
- 海外在留邦人統計(外務省)
本エントリは、訪日外国人統計についてまとめます。
これは日本政府観光局(JNTO)が毎月提供している統計値ですが、ツーリズム・マーケティング研究所というところが更にデータを纏めて使いやすくしているので、こちらのデータ(訪日外国人統計)を使用しました。
※日本政府観光局(JNTO):観光庁が所管する独立行政法人国際観光振興機構の通称
※ツーリズム・マーケティング研究所: JTBの100%子会社
全体傾向
2000年に495万人だった訪日観光客は、2010年に861万人まで増えています。10年でほぼ2倍です。うち、韓国と中国の伸びが大きいですね。ただ2009年は、おもにリーマンショックの影響で678万人まで低下しています。
2011年の統計はまだ出ていませんが、JTMから出た暫定値では621万人と、2009年を下回って2004年の水準となりそうです。前年の2/3程度ですが、3.11の震災と原発事故が日本の観光業に与えた影響の大きさが伺えます。
このグラフを見ると、アジア全体で75%、東アジア4カ国(韓国、中国、台湾、香港)だけで6割を超えていることが分かります。この4カ国からの訪問を詳しく見てみることにします。
韓中台香からの訪日
全体に占めるボリューム感はわかったので、2010.1-2011.11の24ヶ月を月次で追ってみましょう。
韓国からこんなに日本に来ているとは知らなかった。。。ついで中国と台湾が同じくらいですが、国の人口を考えると(中国13億人、台湾2300万人)中国から50倍くらい来てもらいたいところです。香港にいたっては人口700万人しかいないのに、毎月数万人が日本に来ているんですね。
震災がおきた3月から6月までは大きく落ち込んでいるのがわかります。4月には各国の日本ツアーが再開していたのですが、前年比-60%と悲惨な状況でした。しかし、注目したいのは、年末までに前年度比-10%程度まで回復している点です。10月の国慶節休暇では、銀座で中国人観光客を例年通り見かけられるようになりましたが、数字にも現れています。
国別の前年同月比の推移を見てみましょう。
震災後の推移に着目すると、中・台・香からの送客が回復し、特に中国は前年を大きく上回っているのがわかります。熱しやすく冷めやすい国民性を表していますが、経済が引き続き好調で海外旅行の意欲が旺盛であることも伺えます。
一方、韓国は回復が遅く、原発事故への不安が続いているだけでなく、経済的な不安から海外に出にくくなっているのではないでしょうか。
中国からの送客が大きく伸びている理由として、ビザ発給条件緩和が挙げられます。2010.7には個人観光ビザの発給条件(年収ほか)が緩和されており、数字にも現れています。
対中国観光政策の経緯は次のようになっています。(出典:ツーリズム構造変革の12年間を振り返る)
- 2004年 訪日修学旅行の生徒に対する査証を免除、
- 2005年には銀聯カードを日本に導入→中国人観光客の日本国内における消費拡大が図られた
- 2006年 日中両政府は「日中観光交流年」と定め、両国で記念イベントや大規模プロモーションを実施して、相互の観光交流の拡大を進めた。
- 2007年 家族観光ビザ発給開始
- 2008年 個人観光ビザ発給開始
- 2010年 個人観光ビザの発給要件を緩和
- 2011年 には沖縄への訪問を条件とした「個人数次ビザ」の発給を開始
ちなみに、香港、台湾、韓国からの短期滞在(90日以内)にはビザが不要です。この4カ国からの観光客がこの10年で大きく伸びているのは、経済のフラット化に加えて観光政策によるところも大きいですね。
この10年で、東アジアの文化的な交流がますます増えています。国内に混乱は多く世界経済も不透明ではありますが、観光庁発足時の目標であった「2010年度までに訪日観光客1000万人」という目標は、上記のデータを見ると近いうちに達成できると感じました。