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ALS患者高野元の日常と思考と回想

私を救った一冊の本 〜 「ずっとやりたかったことをやりなさい。」

      2015/01/03

2011年は、これまでの人生で最も大きな変化を経験し、決断をした年でした。

2010年末に6年間務めたベンチャー企業を退職し、同時に設立から心血を注いできた中国の子会社も退任しなければなりませんでした。言葉も通じない異国の地で、自分の魂をかけて採用して向き合ってきた社員との別れはとても辛いものでした。彼らと話した数々の夢や約束を道半ばにして反古にしてしまったので、これから自分が自分を信じて歩んでいけないのではないかという恐怖感に苛まれました。

ここからいかに脱出するかが大きな課題になりましたが、その時自分で出した結論は下記のようなものです。

  • 半年は仕事をせず、ゆっくり休む。
  • 一人で海外放浪する。
  • 放浪する以外は、できるだけ家族と一緒に過ごす。
  • 気がおけない友人とだけ会う。

自分の生命力をもう一度試し、安心できる人とだけ接することで、そのうち自分の中からどうしたいかの結論が出てくるだろうと思ったのです。これまでも岐路に立ったときには、自分の胸に手を当てて感情優先で決めてきたので、今回もそうしたかったわけです。

 

ただ日々を過ごしているだけでは流されてしまうので、自分の心と向き合う手引きが欲しいと思っていました。ちょうどその頃手に取ったのが「ずっとやりたかったことをやりなさい。」ジュリア・キャメロン著、サンマーク出版」という本です。2001年に初版が出ていて、隠れたロングセラーでした。

ずっとやりたかったことを、やりなさい。

Amazonの購入記録を見ると2010.11に購入しています。きっかけを正確には覚えていません(なにかのブログだと思うのですが)、何かのキーワードが引っかかったのだと思います。以下に、訳者あとがきの冒頭を引用しますが、きっと「創造的な生き生きとした人生」あたりが琴線に触れたのでしょう。

人は誰でも、自分の中にアーティストの子どもを住まわせている。その子どもを大切に養い育てれば、創造的な生き生きとした人生を送ることができる。では、どうすれば自分の中のアーティスト・チャイルドを育てることができるのだろう? その疑問にきわめて具体的なプランをもって答えてくれるのが本書『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(原題『The Artist’s Way』である。

この本は単純な自己啓発書ではなく、12週にわたるワークショップの手順をわかりやすく書いてあって、実践してこそ価値がわかります。毎日「モーニング・ページ」という日記を書き、週ごとにテーマ設定されている宿題をこなしていくのです。

アーティストとか創造性というと特別なことのように思えるかもしれませんが、教科書に従うのではなく心に浮かんだことをやるのがアーティストであり、創造性なのだと思います。このために大切なことは、自分に対する信頼感と、自分が置かれた環境に対する安心感、そして思いが形になるきっかけに出会う「シンクロニシティ」にあります。

これらは理屈や論理ではなく、「霊的(スピリチュアル)」なものなので胡散臭く感じるかもしれません。でも、人の出会いも偶然の積み重ねなのですから、こういったものに身をゆだねる勇気を持つことが、創造性回復の鍵なのだと思います。また、詳細は省きますが、これまで学んできたサービス開発や経営の要諦のいくつかにつながる話だと感じたことも、この本を受け入れた理由です。

幸いなことに、取り組んだ当時は仕事をしていなかったので時間はたっぷりありました。最初の頃は、自分の心の底に潜っていくような感覚が苦行に近く、毎日午前中の2-3時間を使っていたように思います。また、旅行に出ている間は無理にやろうとせず、かなりゆっくりしたペースで取り組んだので、最期まで到達したのは6月に入っていました。5ヶ月くらいかけてしまいました。

 

この半年の休養で、就職するか起業するかの結論を出したいと考えていたのですが、結局は下記の点を大切にして起業するに至りました。

  • 自分の感性を信じて、好きなこと、やりたいことをやる
  • 他人の決めた枠組みに囚われないで生きる
  • 挑戦と創造を大切にする、気持ちのいい人達と働く
  • 家族や友人と過ごす時間を大切にする

これまで自分に自信が持ちきれず、最後に他人に頼る気持ちが残ってしまっていた私にとっては、一般的なレールから降りるのは大きな決断でした。この本に従って自分と向き合い、多くの友人たちの励ましとこれまでの自分の経験を信じて、自分にあった自分の人生を追求することにしました。

※起業の決断については、3.11を経て考えたことも少なからず影響しています。こちらについては、別途書いていきます。

 

今後どのような出来事が待っているかはわかりませんが、なんとかなると楽観的に考えています。

自分を見失うような状況から回復し、決断のきっかけの一つになった本書をそのうち紹介したいと考えていましたが、一年を振り返りながらここに書いておくことにしました。

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なお、本書で書かれている12週のテーマは次のようになります。

  • 第1週 安心感を取り戻す
  • 第2週 アイデンティを取り戻す
  • 第3週 パワーの感覚を取り戻す
  • 第4週 本来の自分を取り戻す
  • 第5週 できるという感覚を取り戻す
  • 第6週 豊かさの感覚を取り戻す
  • 第7週 つながりの感覚を取り戻す
  • 第8週 芯の強さを取り戻す
  • 第9週 思いやりの心を取り戻す
  • 第10週 守られているという感覚を取り戻す
  • 第11週 自立の感覚を取り戻す
  • 第12週 信じることを取り戻す

 

 - 日常生活, 読書メモ