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ALS患者高野元の日常と思考と回想

真山仁さんの小説を一気読みしました

      2014/12/18

この2週間ほどで、真山仁さんの小説5本を一挙に読みました。

私はもともと小説好きで、気に入った作家の本をよくまとめ読みしていたのですが、短期間で5本分上下巻全9冊を読んだのははじめてのような気がします。

NHKでドラマ化された「ハゲタカ」の作者ということは知っていましたが、当時は小説を読むのを封印していた時期だったので手にしなかったのです。

きっかけは、ちきりんさんのブログにて紹介されていたのが発端です。

2011-09-05 「虚構の自由度」、そしてその価値

だって驚くなかれ、この小説には福島原発で起こったことがそのまま(2008年の段階で)書いてあるんだよ。電源がすべて消失するSBO,メルトダウン、水素爆発で建屋の屋根が吹き飛び穴があく、、、中国の原発への“津波の危険性”まで指摘されてます。

これは読まねばなるまい、と思いAmazonで書評を読んでいるうちに、結局5本の小説をまとめて発注していました。

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簡単にまとめてみました。

題名 文庫発売 単行本発売 概要
ベイジン 2010/4 2008/7 中国での原発建設と安全確保、そして自然災害が引き金となった原発事故がメルトダウンに向かうまで。
マグマ 2009/8 2006/2 企業再生ファンドに買収された地熱発電ベンチャーの奮闘と、原発削減による代替エネルギー化するまで。
レッド・ゾーン 2011/6 2009/4 ハゲタカ3作目。中国ファンドによる国内トップ自動車メーカの買収劇と、米3大自動車メーカの救済を含めた国際的大団円まで。
ハゲタカ2 2007/3 2006/4 国内の破綻企業の買収と再生まで。
ハゲタカ 2006/3 2004/12 国内銀行の不良債権処理と再生まで。

 

ハゲタカに出てくる事例は、バブル破綻で実際に起きた事件を彷彿とさせます。と思ったら、wikipediaには「モデルとなった現実のできごと」という解説がありました。

レッド・ゾーンは、中国投資有限責任公司(CIC)がありあまる外貨準備高を背景に、世界一の自動車メーカであるアカマ自動車を買収しようとする話です。CICは実在の組織であり、中国の外貨準備高は今や世界一です。LAOXやレナウンなど中国企業による日本企業買収はすでに現実になっています。激しい攻防を繰り広げた、技術やノウハウが欲しい中国企業と、破綻寸前の米3大自動車メーカ、そして買収対象となった日本のメーカが大団円に持ち込む結末は必見です。


そして、ベイジンとマグマは、原子力発電と地熱発電を題材にエネルギー問題を扱ったものです。

ベイジンでは、中国での世界最大の原子力発電の建設に携わる日本人技術者の奮闘と、中国での安全確保の難しさ、そして自然災害によってメルトダウンにまで被害が拡大する事故の様子が描かれます。2008年の小説ですが、3.11の予言的記述であって戦慄を覚えます。

マグマは、ベイジンよりも前に書かれています。原発の削減をすすめて地熱発電を代替エネルギーにする、というところは、現在の国会で話が出てきてもいいほどの内容です。

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ベイジンの内容が原発事故を示唆していることがきっかけ読み始めたわけですが、これらの小説に共通して流れているテーマがあると感じました。それは、「既得権益にしがみつく人々や、これに依存した硬直化した社会から、現場の人達の情熱や創意工夫によってこれを脱却すること」です。これは、まさに、米倉教授の言う「創発的破壊」的な小説といっていいでしょう。

もうひとつ、世界の中の日本の位置づけにも気を配っています。ハゲタカの1作目・2作目は、アメリカの金融資本主義に翻弄される日本ですし、レッドゾーンとベイジンは健全な日中関係の模索というテーマを感じます。

経済小説という形をとっていますが、そのなかに散りばめられた登場人物のセリフは、取材を通じて現場から拾ったものが多いのではないかと想像します。そのぐらいリアリティがある一方で、多くの人が知らないことばかりです。マスコミの表面的で感情的な報道に惑わされることなく、われわれも常に問題の本質がなんなのかを知る努力をしないといけないと感じさせる小説群でした。

余談ですが、ベイジンの中で原発を建設する場所は遼東半島の大連の近くということで、この点でも親近感を持って読みました。この中で大連市長が原発誘致のために権力を行使していたことがわかり摘発される場面があるのですが、これも最近大連で起きた大規模デモに通ずる話であって(現実には、市長の責任は追求されていません)、作者の取材力と構想力に感銘を受けています。

ここまでくると、予言小説家と言っても過言ではないですね。すでに震災以降の政治を舞台にした新作が出ていますが、これからも継続して読んでいきたいと思います。

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