愚直に理想を追求すること

日常生活

昨日(10/6)上海のホテルから浦東空港まで地下鉄で移動する間に、ニュースのチェックをしていました。

10/5に発表されたiPhone4Sの情報をチェックする時間がなかったので、それを確認するためでした。期せずしてジョブズの訃報を目にすることになりました。

世界中の関係者やアップルのファンが、8月末のCEO退任の時に、この日が来ることを覚悟したと思います。私もその一人でしたが、1ヶ月あまりで訃報を聞くことになるとは考えもしませんでした。

すでに多くの人がスティーブ・ジョブズの追悼文を書かれています。思い起こせば、私がアップル信者らしくなったのはiPhone3Gを購入してからです。それほど優秀な信者ではありませんが、影響を受けた一人として私もメモを残しておこうと思います。

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最初にMacintoshに触ったのは、1989年の大学院在学中までさかのぼります。当時すでにジョブズはアップルを追い出されたあとでしたが。グラフィカルユーザインターフェースの研究開発に強い興味をいだき、就職もその道を目指すことになりました。しかし当時の私は、まわりに罵倒されながらもSHARP X68000を購入して、OSやハードウェアを叩いて遊んでいました。

就職先は最新のパーソナル・コンピューティングにチャレンジできる環境で、当時はやりのワークステーションからPCまでいろんな環境を試すことができました。業務でMacintoshを使うのはもちろん、一時期はNeXTキューブも遊び道具(!)の一つでした。しかし、金食い虫という印象でMacintoshに自分で手を出す決心はできず、当時の私の愛機は相変わらずSHARPのX68000でしたが、DOS/V互換機を壊しては組み立てる道へシフトして行きました。

1997-98年に一年間シリコンバレーで過ごす機会があり、ジョブズのアップルへの復帰はちょうどそのタイミングでした。帰国直前にボンダイブルーのiMacが発売されたのですが、相当迷った末に買って帰らず、信者になりそこねました。当時の私がはまっていたのは、Palm Pilot というPDAでした。

ようやくApple製品を手にしたのは、2003年のiPod Touchminiからです。iPodとしては3世代目ですが、小さな筐体と無駄のないシンプルなユーザインターフェース、そしてiTunesとの連係を含めたシステムの全体設計に感銘をうけたことを覚えています。そのころ、私は転職して大企業からベンチャー企業で働くことを選択しました。

2007年にiPhone3Gを、2009年にMacBookを、2010年にはiPadを購入し、今に至ります。今年はMacBookAirに乗り換えました。

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今年の7月に40代なかばにも関わらず一人で創業したわけですが、迷いがないかといわれれば嘘になりますし、自問自答しながらの毎日です。

そんな私も、他の多くの人たちと同じように、有名なスタンフォード大学卒業式のスピーチは繰り返し見ては、その都度感銘を受けています。詳細はすでに多くの方が書かれているのでそちらに譲りますが、二つの言葉を常に意識しています。

ひとつは、connecting dots です。いま取り組んでいることが将来なんの役に立つのかは、過ぎてみないと分からない、ということです。新しい取り組みに逃げ腰になりそうなときには、常にこの言葉を思い出します。きっと将来につながるからやってみたいと感じていて、いままでのあらゆる経験がつながってくる時が来るのだと信じています。

もうひとつは、Stay hungry, stay foolish. です。現状に満足せずに、周囲に愚か者扱いされても理想を追求しよう、ということですね。私は、stay foolish を「愚直であれ」と訳すのが気に入っています。周囲から愚か者扱いされるほどとんがった人生は私には想像できないので、周囲の人が少しずつ振り向いてくれるよう、小さくても確実に歩みをすすめていく「愚直さ」がしっくりきます。

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ジョブズが稀代のCEOと言われるようになったのは、卓越した製品群で世界を変え、世界最高の高収益企業を育ててきただけでなく、自社の社員のみならず世界中の人に自分の人生に向き合うことを教えてくれたからだと思います。

今年に入ってから、病気療養、自伝刊行、CEO退任、そしてiPhone4S発表と、おそらく最後の時を見据えて準備をしてきたのでしょう。いろんなできごとに直面してきたけれど、一つ一つ乗り越えて好きなことやりたいことを死ぬまで追求することは、多くの人達のロールモデルになっていくのではないでしょうか。

 

わたしも他人の人生ではなく、自分にとって理想的な人生を追求することで日々歩み、そして死んでいきたいと思います。

日常生活

Posted by gen