今回の大連出張で感じたこと

大連生活

今回の出張では、友人が大連視察に来たため、これに同行してBPO業務をやっている会社の話を聞く機会がありました。この時感じたことを発端につらつら書いてみます。
これまでの中国の成長要因のひとつに、
・圧倒的に低い人件費にて、
・大量の人員が調達できる
ことによる外資の導入が挙げられます。
一方、中国の経済成長は著しく、世界不況にも関わらず昨年も8%を超える経済成長を実現しました。先日の全人大でも、2010年も8%成長が目標と発表されました。インフレ懸念から、政府が成長を抑えている部分があるので、潜在的な成長余力はまだあるはずです。一例として、大連市の昨年のGDP成長率は15%と発表されています。(ただし、これらの数字は鵜呑みにせず、内容を精査する必要があります。)
これは、物価の上昇とあわせて賃金の上昇を招きます。つまり、コスト競争力が低下します。国内需要が拡大しているとはいえ、中国政府はまだまだ外国からの投資を必要としており、このためにもインフレを抑制したいのだと思います。外貨準備高が世界一になっているのも、このあたりの事情が関係ありそうですが、その辺の考察は今後もう少し整理してから書いてみたいと思います。
次に、世界経済不況の後にBPOの流れが加速し、コスト削減のために、バックオフィス業務のアウトソーシングが増えているそうです(統計値はもっていないので、今後調べてみます)。
需要が増えると人が必要になります。これに伴い、人員の教育と業務品質の維持が課題になります。
ある程度均質な人材が確保できる範囲では、教育システムも有効に働き、垂直統合された業務であっても人材育成が可能です。しかし、各地区の人材供給量には設置大学の数など限界がありますので、一定数を超えると人材育成のシステムが課題となります。実際、大連地区のソフトウェア企業では、上級職の奪い合いになっています。
そのキャパシティ以上の仕事が来たらどうなるでしょう。人材育成が間に合わず、業務品質が維持できません。このためには、業務を分解し、いくつかの拠点の強みを作り、これらを統合する仕組みづくりが必要です。
今回訪問した企業では、中国国内に複数の拠点を持ち、それぞれの業務を徹底的に絞り込んで拠点間分担を図っていました。業務の絞り込みにより作業が単純化できるため、人材供給をおこないつつ教育コストを抑えることができるわけです。もちろん拠点統合のコストはかかりますが、一旦仕組みができてしまえば小さなものです。
中国は巨大な国であり、省が違えば習慣も違うので、複数の国が集まっているようなものです。中国共産党により強力に統制されてはいるものの、この習慣の多様性は、人口が大きいことに加えて、都市ごとの業務の特徴を産み出し、中国の継続的な成長の要因となるかもしれません。
さて、今後中国が成長していくと人件費の上昇は避けられず、現在の2倍に到達したら(大卒初任給が現状3-5万円が、10万円程度になる)、もはや低コストのBPO拠点としての存在価値が薄れるでしょう。これに対抗するには、賃金に見合った付加価値をつけていくしかなく、今後の課題は創意工夫による差別化だと思います。
大連地区も、ソフトウェアのオフショア開発や、伝票入力やコールセンターに代表されるBPOで成長してきましたが、現在の教育システムがソフトウェア開発を含めて単純労働の業務訓練になっているため、付加価値創造ができる人材輩出には課題があります。原理原則を教え、人と異なる新奇な発想に価値をおく教育に転換するだけでなく、他都市との連携も強化する必要があるでしょう。
今回の視察では、こうした変化に対応しようとする努力をあちこちで感じました。すくなくとも大連地区では、現状に対する危機感を持ち、変化を生み出そうと考える人が増えているのだと思います。
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日本は、まだ高い教育水準と付加価値創出の能力を維持していますが、今回のトヨタ・リコールに代表されるように、こうした能力が低下していくのではないかと危惧しています。なぜなら、日本の強さは戦後40年間の不断の努力で築いてきたものであり、過去10年でその強みは毀損したと感じることが多くあるためです。
日本の経済は、どうしても東京一極集中になってしまっていますが、地方がもっと活性化して欲しい。そして、国内だけでなく、隣人である中国や韓国との交流も増やしていくことで、再度成長の糸口を見つけていきたいものです。
いろいろな議論はありますが、橋下大阪府知事や東国原宮崎県知事のように、各都道府県がみずから情報発信して力をつけるべきです。このためには、各都道府県の役人の方たちは、中途半端な視察旅行をして監査で叩かれるくらいなら、堂々と長期に他府県・他国の視察をして学び、情報発信すべきだと思います。
私は偶然にも中国に触れる機会を得て、現地に友人や同僚もでき交流を深めてきました。すべてがいい経験とはいいませんが、こうした経験や思いを持つ人が少しでも増えるように、仕事でも私生活でも情報発信できるように一層努力したいと思っています。

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Posted by gen