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ALS患者高野元の日常と思考と回想

街の本屋さんは喫茶店になる?

      2015/04/22

私はそれなりに読書好きで、その多くはAmazonで購入しますが、街の本屋さん(ブックオフ含む)で新しい本を見つけるのも大好きです。そんななか、出版業界は長年の構造不況に加えて、電子書籍の普及が目前に迫っています。

4月にAmazon Kindleの販売が始まり、今後電子書籍が急速に売れ始めていくとすると、いったい街の本屋さんはどうなってしまうのか? と、少し考えてみました。

◯出版業界の構造

まず、出版業界の構造を整理してみましょう。日本の出版業界は概ね次のようになっています。
(ブログ『出版業界研究本をつくろう〈第4回〉本の値段から考える』を参考にいたしました)

  • 著者:
    • 本の中身を書く人たちです。出せばベストセラーの大作家から、コラム記事を書きまくるライターなど、いろんな作家さんがいますね。
  • 出版:
    • 本や雑誌を企画し、そこにコンテンツをいれこんで本の体裁を整える人たちです。講談社や小学館など、出版社の編集者がこの役割を果たしますね。DTPメインの中小企業もここに入ります。
  • 印刷:
    • 編集されたコンテンツを印刷して製本する人たちです。大日本印刷や凸版印刷などの印刷会社がこの役割を果たしますが、電子コンテンツを手がけている所も多いです。
  • 流通:
    • 印刷された本を、全国の書店に配送する人たちです。日販・トーハンといった流通会社がこの役割を果たしますが、店舗開発を手がけてもいます。
  • 販売:
    • いわゆる本屋さんです。紀伊國屋書店や三省堂といった大手から、街の本屋さんまで様々なかたちがあります。Amazonや楽天ブックスといったオンライン書店もここに入ります。

このうち、電子書籍になっても絶対に必要なのは、作家と出版です。そもそもワープロで打って、PC上でDTP編集するのですから、もともと電子化されています。

印刷はどうでしょう? 電子化されると不要ですね。一部がアプリ開発やHTML/ePubコーディング(最もこれはツールがやってくれる)にシフトするくらいでしょうか。

流通は、はっきり言って不要になっちゃいますね。すべてオンラインで完結してしまいます。現在の業界構造上、流通が出版社から一旦本を買い取って、売れ残りが出た段階で返本し返金してもらうという、債権保有機能というか資金の貸付機能をもっているところが出版業界の構造を理解すべき重要なポイントになっています。

さて、販売です。街の本屋さんはなくなってしまうのでしょうか? オンライン書店で販売可能なのでやっぱりなくなってしまいそうです。

とこれでは話が終わりになってしまうので、なくなると困るなぁ・・・なくならないようにするにはどうすればいいのかな? という視点でもう少し考えてみます。

◯なぜ本屋で買うのか?

我が身を振り返ってみると、次のような条件が当てはまるときに街の本屋で買っています。

  • 翌日配送が待てず、いますぐ欲しいとき
  • 時間つぶしに寄ってつい購入してしまったとき
  • 新刊や面白そうな本を手にとって探したいとき
  • 中身を比較検討したいとき

ただ、こんなとき街の書店で困るのは、

  • つい買いすぎてしまって荷物が増えてしまった
  • 世間の評判を確かめずにつまらない本を買ってしまった

といったところでしょうか。

◯電子書籍を本屋で買うのか?

さて、先ほど上げてみた町の本屋で買う理由と課題を電子書籍に当てはめてみます。無理矢理な気もしますが・・・

まず「いますぐ欲しい」と「荷物が増える」については、ネットに繋がりさえすれば問題解決されるので、検討外です。

  • 時間つぶし → 現状では、電子書籍を物色できるのはオンラインストア上ですねぇ。
  • 手にとって探したい → これはオンラインではできないですね。
  • 比較検討したい → これはUX次第ですが、紙の本にはかなわないと思いたい。
  • 世間の評判 → これもUX次第ですが、「この街の」とか「この店の」ができると面白そうです。

まとめると、

  • オンライン書店で、リアル書店に近い体験ができるようにする
  • その本屋ならではの、電子書籍選びを楽しめるようにする

の二つの方向性が有りそうですが、前者は既存のオンライン書店のUX改善と同じ話になるので、以降は考えないことにします。

◯電子書籍選びが楽しめる本屋とは?

さて、本屋で電子書籍を選んで楽しい要素ってどんなことになるでしょうか?

表紙? 立ち読み? 視覚からのひらめき?

うーん、どれもアリですが、オンライン書店のUX改善の話に帰結してしまいそうです。

本を選ぶときのひとつ基準は、誰かの推薦です。ブログで推薦されている本をAmazonで購入するのはよくあることです。あるいは、ゆったりした場所や時間を過ごす際に本を手に取ることもありますね。

そう考えると、街のお店で電子書籍販売をする場合は本の売上から収益を得るモデルではなく、本を媒介とした別の収益モデルと組み合わせて考えたほうがよさそうです。本を媒介として売上げを伸ばせる業態があれば、組み合わせることで相乗効果が得られますね。

ちいさな街の中には、喫茶店も本屋もあるわけで、もういっそのこと融合したらどうか?と考えます。

ご存知のように、TSUTAYA+カフェというのは、うまく相乗効果が生み出せそうな組み合わせですよね。私は最近利用するようになりましたが、2005年にこの形態の積極展開に着手してから、いまでは22店舗に増えています。

そもそもアメリカの本屋さんは普通に店内でコーヒーを飲みながら、買ってもいない本を一日読むことができました。日本では、今だに珍しいのですが、全く新しい形態ではないのですよね。

◯喫茶店での電子書籍販売であったらいいサービス

そうはいっても、わざわざ店頭で電子書籍を買うのって面倒ですよね。書名がわかれば、あとはオンラインストアで検索して買えます。だとすると、紙の本を今まで通り並べておいて、それを見比べたユーザが、その場で電子書籍を変えるようにすればいいですね。

とすると、追加であったらいいサービスの形は、

  • レコメンド: スタッフおすすめの本、旬な本、昨日TVで紹介されていた本、とか
  • 割引: 店内で電子書籍を購入すると、コーヒーが40円安くなる、とか
  • 購入した電子書籍を紙の書籍として印刷してくれる、とか

などでしょうか。

割引を実現するには、リアル環境でのアフィリエートの仕組みが必要ですが、オンラインで電子書籍を買うとクーポン(数字の羅列で良い)が発行されて、これをレジで提示するなどで解決できそうです。

ちなみに40円安くは、スタバの「今日のコーヒー」のショートサイズとトールサイズの差が40円なので、そのぶんを割引して欲しいという願望だったりします。

◯ビジネスが回るためには?

さて、果たしてこの形態はビジネスモデルとして成り立つのでしょうか。

街の本屋さんや喫茶店が、自己責任でマーケティングを考えて利益を取っていく話になっていきます。そうすると、情報収集やプロモーション、価格設定にもある程度自由度がないと、才覚のあるお店が売上を伸ばすことができません。

こうなった時に足かせになるのは、

  • 返本制度: 書店は流通から降ろされた書籍を売れない場合に返本できる。
  • 再販価格規制: 書店は書籍の販売価格を変更できない

という2つの業界慣習ですが(詳細は、ネット上に様々な情報が溢れています)、新しい時代の販売形態を試すためには、業界慣習を壊していかねばなりません。しかし、この2つはセットで意味があって、書店のリスクを軽減するという効果もありました。

ちょうど先日、日経に『日販、本「買い切り」導入へ協議 出版社・書店と』という記事が出ました。ということは、新しい環境に適合できない書店は(さらに出版社も流通も)ビジネスを維持できなくなっていく可能性が高くなります。

只の本屋さんのままだといずれ潰れてしまう→新業態を試さざるを得ない→喫茶店と併設する?→フランチャイズでノウハウ取得、みたいな流れが見えてきます。最初にフランチャイザーを宣言するのは一体どこでしょう。もちろん喫茶店以外の形態もあると思います。

そうそう。アメリカでは書籍のオンデマンド印刷のベンチャーが複数社立ち上がっているそうです。

このプリンタを備えた喫茶店というのもありかなぁ。

——

まとめると、一ユーザとしては楽しく本が選べる環境として、複数の選択肢が欲しいなというところに尽きるのですが。

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