ALS療養の経緯(栄養・呼吸管理編)

講演スライド

栄養管理と呼吸管理について、わたしの経験をまとめてみました。

私は球麻痺先行だったので、訪問看護師から「早く胃ろうを作りましょう」と説得されていましたが、半年後に作りました。当初は、胃ろうを作ると口から食べられないと思い躊躇していましたが、「そんなことありません」と一蹴。

食事に一時間以上かかるようになり、しかもとても疲れるようになって決断しました。作っても使わなければいいと思ってましたが、あっという間に食事に2時間かかるようになり、口からミキサー食を食べるだけでなく、胃ろうからの経管栄養を併用することに決めました。

このころ、誤嚥防止手術というものがあると知りました。そして、そのためには気管切開も必要とのことでした。

一方、呼吸に関しては、あまり現実感がありませんでした。まだ当分死ねないと思い、初期の頃から人工呼吸器をつけると漠然と決めていました。それでも当初は、苦しくなって救急搬送されて、意識のないなかで気管切開されるケースばかり耳にして、それは嫌だなーと思っていました。

2015年の暮に検査入院したとき、主治医に夜間バイパップを勧められて、受け入れました。しかし、顔に合うマスクがなく顔が痛いので、ほとんどやりませんでした。2016年の夏頃から血中酸素濃度が95%を切るようになり、当時の記憶があまりありません。そろそろ気管切開の時期を考えないといけない、と思い始めました。

胃ろうを作ってから半年ほどすると誤嚥が始まりました。食べかすもですが、お茶が気管に流れ込むようになり、飲めない。食後のカフアシストが必須になりました。口から食べ続けたい、ビールが飲めるようになりたい、と、そろそろ誤嚥防止手術をしようと気持ちが固まりました。

一方、呼吸面では、顔に合うマスクが見つかり、夜間のバイパップを続けられるようになり、酸素濃度は97%前後まで回復していました。しかし、日中にぼーっとしている日が増えて、検査したところ二酸化炭素濃度が上がっていることがわかりました。ガス交換がうまくいかなくなっていたんですね。軟口蓋(のどちんこ)の筋力が落ちてしまい、垂れ下がって気管口を塞ぐので、仰向けには寝られなくなっていたことも関係していたと思います。

頭をクリアに保ちたい、そのためには、そろそろ気管切開手術を決断する時期が来た、と思いました。

そんなわけで「ビール飲みたい」と「頭をクリアにしたい」で、誤嚥防止手術と気管切開の手術をうけました。

手術後、程なくして、プレモルを味わうことができました。2年ぶりです。ミキサー食ではありますが、誤嚥しないようになったので食事も楽になりました。

さらに、ラーメンが食べられるかも、と思いたち、少し工夫して食べられる方法を見つけました。麺を短くして、とろろを混ぜると食べやすいのです。いまや、インスタントラーメングルメです。

栄養が安定して、元気になりました。

また、夜間は呼吸器をつけるようにして、あおむけでもよく眠れるように成り、頭もクリアになりました。

手術のすこし前に、呼吸筋をリハビリできるL I Cトレーナーを導入したのですが、口マスク越しではどうしても送気が漏れてしまうので、効果を感じにくいままでした。しかし、手術後に気管切開口に挿入したカニューレに接続することで、送気が漏れなくなり、効果が増すように感じました。
実際、呼吸機能は急速に改善していきました。その詳細は、こちらにまとめてあります。

手術からもう5年経ちましたが、当時からほとんど進行していないようです。当時はくよくよ悩んでいましたが、結果として良い決断をしたなと思っています。