ALS進行と療養の経緯(13)~2020年
今年はほとんどブログを書かないままに、あっという間に年末を迎えてしまいました。
世界中がコロナウィルスの感染に翻弄されて、われわれALS療養者の生活もダメージを受けましたが、自由に外出できなくなった社会は、われわれの生活に追いついてきたと感じる場面も増えたと感じた一年でした。
体の状態
進行は止まったとは言えないものの、かなりゆっくりになっており、日常生活はほとんど変わっていません。
- 食卓に移動して、口から食べられる(刻み食やミキサー食ですが)
- 背もたれがあれば、長時間座位が保てる
- パソコンも視線入力で、ほぼ自由に操作できる
- 外出時の車椅子も5-6時間は座っていられる
- 睡眠も6-7時間取れている
これは、誤嚥防止・気管切開手術を受けた2017年後半からあまり変わっていないということで、とてもありがたいことです。
呼吸管理
呼吸筋のリハビリをきちんとやり続けることで、呼吸機能は維持できています。自力吸気量VCは1200cc前後、強制吸気量LICは4200cc前後、血中酸素濃度も97%前後を維持しています。昨年は一時期、自力吸気量が1000ccを切るようになり、いよいよ24時間呼吸器が近づいたかと覚悟しましたが、回復したことになります。
とはいえ、順調だったわけではありません。GWに看護・介護体制が薄くなるのは例年のことですが、今年はコロナ禍もあり1週間ほどリハビリをサボってしまいました。結果として、少し体調が落ちました。と言っても昼食後にとても眠くなってしまう程度ですが、2016年に血中二酸化炭素濃度が上がっていた頃の感じに似ていたので、心配になりました。
気管切開したあとにやめていたカフアシストを再開して排痰を促し、肺のCTを取るなどの検査をしました。結果として、肺に影もなく血中二酸化炭素濃度も正常で、ALS以外は極めて良好な状態でした。
栄養管理
私は胃ろうからの経管栄養をとるだけでなく、家族と同じものをミキサーにかけて口から食べています。毎年の飲み込みが悪くなる時期があり、そろそろだめになるかなと感じつつ持ち直しています。
昨年は、一日の摂取カロリーを1800cc目標としていましたが、筋肉量が減って代謝が落ちたので、最近は1600ccにしています。体重はなんとか64キロ前後を保っています。
看護・介護体制
私の日常は、訪問看護とヘルパーの介護に支えられています。いまは一日の2/3を訪問スタッフに頼っていて、残りは妻の担当です。私の一日はこちらにまとめていますので、ご興味おありの方はご覧ください。
実は4月に、重度訪問介護事業所「そうはつ介護ステーション」を開業しています。ヘルパーの求人は特にせずに、コネできてくれた方と学生アルバイトで編成しています。夜勤の一部は外部の事業所のお世話にもなっています。
介護事業は、自治体からの給付金が売上で、支出のほとんどはヘルパーの労務費です。限られた売上の中で、労務費を采配するのはなかなかに難しいですが、給付金の加算のシステムが大体わかったので、事業をどう広げていくかが来年の課題です。
社会参加
今年はコロナ禍で社会参加の機会が制限されました。それでも、夏前からオンラインの活動が増えていきました。
患者会活動
日本ALS協会神奈川県支部、川崎つながろ会ともに、3月から活動を自粛しました。なかなか状況が改善しないうちに緊急事態宣言まで出てしまいました。
7月からはオンライン形式を試すようになりました。以前からFacebookメッセンジャーのビデオ通話を補助的に利用していましたが、全員がオンラインになると力不足で、ZOOMに移行しました
直接会えないのは寂しいですが、何もしないよりはるかにましです。
講演活動
2月に最初の講演をしたあとは、3-5月に予定されていた講演がすべて中止となりました。
6月の講演がオンラインに切り替わり、以後はほとんどがオンラインになり、結局13件の講演・講義を行いました。代表的な講演としては、
- 6月:東京都難病看護師養成講座にて、私の療養生活を紹介
- 9月:Zen2.0にて、曹洞宗僧侶の藤田一照さんと、ALS生活と禅の相似性について対談
- 10月:神奈川県保健福祉大学社会人向け講座にて、ALS療養生活におけるテクノロジーの活用について講演
- 11月:難病看護学会にて、私が取り組んでいるリハビリとその効果について発表
- 12月:日本財団の就労支援フォーラムにて、重度障害者の就労についてのシンポジウムに登壇
というバラエティに富んだ講演活動となりました。現在の思考や経験はあらかた出し尽くしたと思います。
ただ、内容の幅がこれだけあると、準備にもそれなりに時間ががりますし、13件中の11件は7月以降のものです。つまり、毎月2回の講演を引き受けていて、しかもそのうち4件は新作で聴講者も多い、プレッシャーも強いものでした。
特に10月は事前収録も含めて、連日資料作成と講演に追いまくられることになり、1週間ほど体調不良で次の講演準備が滞る有様でした。この頃にうけた講演以外の仕事の依頼は、いくつも年末まで締め切りを延ばしてもらいました(関係者の皆さん、あらためてお詫びします)。また、本が全く読めませんでした。
今年は、受けた依頼はすべて引き受ける方針でいましたが、他のことが全くできなくなったので、来年は講演の時間を減らします。
また、これだけ講演しましたが、参加者限定・期間限定のものが多く、広く知ってもらえる形ではありませんでした。来年はこれらの内容をブロクなどで公開していこうと思います。
共生社会アドバイザー
昨年11月に委嘱されましたが、担当部署の福祉子どもみらい局・共生社会推進課のみなさんも私も、議論のテーマ設定やリモート参加の形態を模索していきました。4月には契約を延長していただき、成果を出せるように議論を重ねてきました。
共生社会推進課は、津久井やまゆり園の事件を契機に制定された「ともに生きるかながわ憲章」を普及させることをミッションとしています。その一環として、憲章の広報活動に活用していただいています。その一つが、神奈川テレビでの広報番組「カナフルTV」での取材です。この他にも、大学での講義やイベント参加などを担当しました。
次に取り組んでいるのが、重度障害者の生活支援を担うテクノロジー「ともいきテック」の発信です。こちらは、県サイトの「ともに生きる社会かながわ憲章」ポータルサイトの中に、
- テクノロジーを活用した重度障がい者の社会参加の事例を紹介します!
コーナーを作りました。初回は私の事例を取り上げていますが、今後は県内の事例を継続的に追加していく予定です。
もう一つ、重度訪問介護の普及についての取り組みも進めていますが、こちらは成果を発信できるまでもう少し時間がかかります。来年をお待ち下さい。
その他
ALSの告知を受けてから毎年開催してもらっている「活動報告会」ですが、やむなくオンライン配信にしました。
秋に開催してきた「みんなで創る、神経難病患者と一緒に鎌倉に行こうプロジェクト」は、企画自体しませんでした。
やはり、場を共有することで得られたり与えられるエネルギーがあるので、来年はリアルで開催したいものです。
おわりに
今年も一年生き延びました。
体を維持して日常生活を変わらず過ごせているのは、訪問スタッフを始めとする医療者のサポートのおかげです。
様々な社会参加ができているのは、ヘルパーの皆さんのおかげです。
社会参加の機会を提供してくれるのは、古くからからの友人、ALSになってからの知人・友人や県庁のみなさんのおかげです。
皆さん、来年もよろしくお願いします。