[読書] フューチャーセンターをつくろう → フューチャーセッションにも参加してきました

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長年仕事をやっていると、それなりにファシリテーションの技術は磨かれていきます。チーム内のタスクの調整然り、状況改善のアイデア出し然り。

新規事業を起こしたい、会社の将来をどうすれば良いのか、という中長期的な課題設定の中でもブレーン・ストーミングは役に立ちます。そこでもファシリテーション技術がカギを握るわけですが、長期の活動を支えるだけのアウトプットを出しにくいと感じてきました。

長期の課題に対応するための目標設定は、どうしても抽象的なものになり、強い動機を関係者が共有しないといずれ形骸化します。また、最初のアクションを定めても、それが終わると次にすべきアクションが見えなくなります。さらに、長期の目標であるほど賛同者を増やしたいのに、目標が形骸化すると賛同者はいつかいなくなってしまいます。

誰かがスーパーなリーダーシップを発揮して組織を変化をもたらすという話は、多くの人が内心に持っていると思いますが、現実にはそんなスーパーマンは数が限られています。また私自身は、現場の課題は現場のアイデアが最も優れたソリューションを産めると信じているので、普通の人が普通に頑張ればできる組織変革の方法がないものかと考えたり、探したり。

野村恭彦さんの「フューチャーセンターを作ろう」は、そんな問題意識に一つの解をもたらしてくれるものでした。

フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

「フューチャーセンター」とはなんでしょうか? 本文中から一文を抜き出してみると、

「未来の知的資本を生み出す」フューチャーセンターは、人が成長し、アイデアが創出され、人のつながりが生まれる場所

とあるので、これだけ見ると箱モノのこと?誤解されてしまいそうです。しかし、この表面的な概念の裏ではかなり深い考察が行われていて、イノベーション手法として検討されてきた数々の手法が再構成された結果としてのフューチャーセンターであることがわかります。

さて、このフューチャーセンターを箱とすると、その中で行われるクリエイティブな議論が「フューチャーセッション」です。ここでは、スーパーマンが素晴らしいアイデアを説明するのではなく、問題意識を持つ普通の人たちが参加し、気づきを得ることで最終的に「集合的な知恵」が創発されるのを期待します。

このためには良いプロセスが必要であって、そのプロセスを支える原則を6つ挙げています。

  1. 想いを持った人にとっての大切な問いから、すべてが始まる。
  2. 新たな可能性を描くために、多様な人たちの知恵がひとつの場に集まる。
  3. 集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果的に自発性を引き出す。
  4. そこでの共通経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される。
  5. あらゆるものをプロトタイピングする。
  6. 質の高い対話が、これからの方向性やステップ、効果的なアクションを明らかにする。

ファシリテータはこの原則を深く理解して、場を育てる挑戦をすることになりますが、モデルプロセスが提示されているので、こちらも簡単に引用します。

  1. 視野を広げてテーマ設定
  2. 多様性を確保して人集め
  3. 非日常経験を演出
  4. 主体性を引き出す運営
  5. 参加者全員の深い気づき

通常の会議とはちょっと違う工夫が必要であることがわかるので、気後れしてしまう人も多いでしょう。そんな方は、実際にフューチャーセッションに参加することをお勧めします。私自身も先日開催された「働き方の未来を考えるフューチャーセッション」に参加してみました。参加した感想は、「一時間足らずで、出席者が熱く議論する場ができあがって行くことの感動」でした。本当に、その場で出会った見も知らずの人が、良い問いとプロセスの設定だけでどんどん打ち解けて議論ができるようになるのです。

詳細は、筆者である野村さんのブログを参照いただくとして、この感動体験があれば少々面倒に思える場のセットアップも、自分のスキルを磨こうというモチベーションも、持ち続けることができます。

さて、このセッションでのアウトプットは、

  • 自分たちにとって「大切な問い」を立てる

というものだったのですが、実はこれは先に引用した6つの原則の第1項になっています。この「大切な問い」は、不確実な環境で想いを形にするために大切な指針になります。経営管理的にはビジョン・ミッションの構築に近いのですが、その手前のプロセスになると思います。自分の思いの本質に気づき、シンプルで強い目標を定めるまでは、この「大切な問い」が必要なのだと思います。

この「大切な問い」を持つためにフューチャーセッションを活用できるといいですね。私も、チャンスを見つけてトライしていきます。