決心のしかた(1)

父からの手紙

先日書いた「やりたいことはどうやったらみつかるのか」 の中で、

彫り始めるには、どういう形にするかを決めないといけない。これは決心であって(たいていは 心の底から湧いてくる)、見つけるものではない。

と書いた。「決心」をさらっと書いていたので、あらためて決心について書いてみたい。

決心とはなんだろうか?

大辞林には、「ある物事をしようと心をきめること。」と書いてあるが、読んで字のごとくでよくわからない。どうしたら決心=心を決めることができるのか、について考えてみよう。

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我が身を振り返ってみても、さまざまな決心をしてきた。大きいものだと、就職、研究テーマ、結婚、異動、家の購入、転職、独立になるだろうか。小さいものだと、ランチの選択、今日・今週・今月の目標、旅行の行き先、など、数えればきりがない。

小さい決心は、その時その時の直感で決めてしまうことが多いが、大きな決心となるとそうはいかない。個人差はあるだろうが、だれでもひと通りは悩むものだ。

私は次の3つの段階を意識して、大きな決心を行ってきたように思う。

  1. 心のなかから湧いてくる感情に向き合う
  2. 周囲の声や世間の常識に惑わされない
  3. 何があっても逃げずに取り組めるか?

私自身は40歳目前となる2005年初に転職をしたのだが、その時のことを例にとってみよう。

私には就職するときに考えた「エンジニアとしてものづくりを通して社会に貢献する」という漠然とした目標があって、ソフトウェアの設計をしたり難しいシステム技術に挑戦するのが好きだったので、NECの研究開発部門にいた。一回大きな失敗をしたことで、難題へ挑戦する勇気を失いかけたり、社内の組織改編などもあって、希望して技術開発から事業開発部門へ35歳で異動した。その後5年たらずで検索サービス事業を軌道に乗せて金のなる木に育てたところ、というのが当時の背景である。

心の中から湧いてくる感情に向き合う

当時は国内外のさまざまなベンチャー企業と付き合っていて、少人数でもリスクを取りつつダイナミックに動いていく様子に心惹かれるようになっていた。「ああ、こういう仕事や働き方、きっと楽しいだろうなぁ」という気持ちになっていた。

一方、事業部で2年余り過ごした頃から、大企業の管理職として昇進して行くイメージをどうしても持てず、「うーん、偉くなると自分の人生観と違う役割を演じないといけないんじゃないか」という感情を抱いていた。転職の可能性を考えて人に会い始めてもいた。今振り返ってみると、当時の未熟さによる部分も多いが、激務でハイプレッシャーだったことによる疲れもあったのだと思う。

明確に転職を意識したのは、2004年の5月に商談でシリコンバレー出張した帰りの飛行機だった。コア技術をアライアンスで調達するのが目的だったので、先方のエンジニアが自分たちの技術がいかに工夫されていてすごいかを説明してくれて、こっちも「それはすごいね」と答えたわけだ。

帰りの飛行機は、仕事を終えてリラックスしていたのだと思う。久しぶりにシリコンバレーの空気に触れた後に商談を振り返ったときに、「いったい自分は何やってるんだ?買いたいんじゃなくて、作りたいんじゃないのか?」と心の声がしたのだ。そのあと何ヶ月も「難しいシステム作りたい、作りたい、作りたい」と自分の中にこだましていて、縁あって転職する会社と巡り会うことになる(巡り会いについては、別途書きたい)。

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人間は日々、いや今こうしているだけでも、いろんな感情が湧き上がっているはずだ。私の例でも、

  • 心に引っかかって、なぜか気になる。
  • 自分らしくないので、状況を変えたい。
  • 考えはじめると、ワクワクが止まらない。

といった感情を捉えている。

この「なぜ自分はそうしたいのか?」を感情でとらえることが、決心の第一歩になる。

しかし、こうした感情を常に全て自覚できるとは限らない。時には無意識に封印していることもある。正の感情も負の感情も合わせて感じるためには、定期的にじっくり向き合う時間をとりたいところだ。僕の場合は、帰国の飛行機が、激務の中で生じた感じることができる時間だったわけだが、最近瞑想やマインドフルネスが流行っているのも、同じことなんだと思う。

自分の心の声に気づくエクササイズの手引として「ずっとやりたかったことをやりなさい」という本がある。以前ブログを書いたので、興味ある方は参照して欲しい。


 決心の仕方(2)に続く