Back to the Macがもたらす変化

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昨日出張からもどったので、夕食のあと、10/20に行われたApple Special Event"Back to the Mac" を見ました。Apple KeynotesはPodcast に登録してあり、イベントがあれば勝手にダウンロードされてくるので、いつでもどこでも見ることができます。自宅にいるときは部屋を暗くして、24インチディスプレイいっぱいにして見るのが気に入っています。
今回のイベントは、直後からMacBook Air の話題で持ち切りでしたが、私にはMac OS X Lionの内容の方がインパクトが強かったので、こちらについて書いておきます。

その前に、プレゼンでも説明された、アップルの事業概況に触れておきます(このブログのまとめが分かりやすい)。
驚いたのはアメリカの個人向けPC市場のシェアが20%を越えたということです。つまりアメリカの個人PCの5台に1台はMacということです。また、PC事業の規模が、Fotune500社の110番目の規模になったというのも驚きです。これで、全事業の1/3なのですから、いかにアップルが成長してきたのかが分かります。
20%はちょっとなあ・・・と思いましたが、別の記事では「アメリカNo.1のPCベンダーになった」「シェアが10%を越えた」と書かれていますので、クリティカルマスを越えたと言えると思います。
日本でのシェアが気になるところですが、街なかのカフェでMacBookを開いている人が目につくような気がします(これは自分が気になるからかも)。また、Macの導入を進めている企業も増えてきたのではないでしょうか(うらやましい)。
さて、Mac OS Lion の話です。
Appleのサイトにある先行告知でも「Mac OS Xのパワーに、iPadの魔法を」とサブタイトルがついていますし、ジョブスがプレゼンの中で言っていた通り、iPhone/iPadで培ったノウハウをMac OSに反映させています。
四つの新機能として、
(1) Mac App Store
(2) Launch Pad
(3) Full Screen App
(4) Mission Control
が挙げられていますが、私には、
1. PCのソフトウェア流通モデルの再構築 (1)
2. Xerox PARC Alto 以来のGUI環境の革新 (2)(3)(4) ※正しくはXerox PARCのAltoなので修正しました
に見えます。
1.については、すでにiTunesからiAppに続き、PC(Mac)のアプリまで自社のエコシステムに入れて掌握することになります。これによりパッケージの店舗流通は減るでしょうし、一方で数多くのアプリベンダーが参入できるようになります。
iPhoneの開発を手がけた開発者は、それほどの負担なくMac OSアプリの開発ができますので、ますます拡大することになるでしょう。今回のイベントではMac OSアプリケーションの開発者は60万と発表されましたが、PCシェアが20%を越えた今、さらに増えることは間違いないありません。これにより、Mac用ソフトウェアの流通と売上がさらに増えることでしょう。iTunesとiAppで起きたことが、PCでも起きるということです。
このビジネスモデルで、パッケージ流通モデルのMicorosoftと、クラウド流通モデルのGoogleと対抗することになりますね。
2.については、いわゆるGUI(Graphical User Interface)が、タッチスクリーンUIへと大きく変化することになります。スマートフォンやタブレットの普及に合わせて、PCもより直感的なユーザ体験を提供できるように各社が追随することになります。
これは、自分の過去の経験を振り返ってみても感慨深いものがあります。いわゆるGUI(Graphocal User Interface)は、Xerox PARCで開発されたAltoSTAR以来、ビットマップディスプレイとマウスを前提としたマルチウィンドウをベースとしていました。この真似をしたMacintoshも、その真似をしたWindowsも、現在のLinux GUIの基盤であるX-Window Systemも、皆同じです(ちなみに私は、一時期ウィンドウシステムの研究に携わっていたことがありました)。
これが、マウスからトラックパッドに、プルダウンメニューからローンチパッドに、マルチウィンドウからフルスクリーンになるのです。
iPhoneやiPadを使う上では、マルチタスクじゃないと不便だけど、このサイズだとマルチウィンドウにできないしなぁ、という不満がありましたが、iOS4の改良もあり最近はユーザが慣らされてしまいました。これを逆手に取ってPCの環境を変えてくるというのは、すごくAppleらしい提案だと思います。
さて、こうした変化によって、ユーザ体験の大きな変化が予想されます。
それは、Webブラウザの衰退です。
これまではブラウザ+検索エンジン/ブックマークが、ネット利用のスタイルでした。最近は、検索エンジンがtwitterなどのソーシャルメディアにシフトしていますが、前提はWebブラウザによるネット閲覧であることにかわりありません。
ネット利用が、スマートフォン/タブレットに軸足を移していくことで、ブラウザからコンテンツやメディアごとのアプリ中心になっていくと考えています。サイトの集客は、アプリのダウンロードに置き換えられることになり、メディアのコンテンツ編集や広告掲載/配信の仕組みも大きく変わっていくと想像しています。
このとき、アプリ流通をコントロールすることができれば、ネット上のコンテンツや広告の流通・配信もコントロールできることになります。すでにiOS4と同時にiAdが発表されていますので、アップルにとっては既定路線ではありますが、WindowsやChromeOSでも、この流れに逆らえないと感じています。こうした流れを意識して、将来のサービス開発に取り組んでいかないとならないと思いますし、逆にこれからの数年は既存のサービスプロバイダにとっても、プレゼンスを上げるチャンスになると考えています。
ところで私は、新しいMacBookAirは買いません。使用中のMacBook(Late2008, 13inch, Core2Duo 2.4GHz, 4GB mem)がまだまだ十分働いてくれるので、10万円を越える投資は今年はもう無理。外出時は、引き続きiPadに活躍してもらうことにします。